内容説明
象徴界・想像界・現実界そして対象a。―フロイトを継ぐ精神分析理論の全体像。
目次
序章 知のアポリア
第1章 二つの症例
第2章 鏡像段階論
第3章 父の名前
第4章 シニフィアン
第5章 欲望と主体の運命
第6章 フロイトの覚醒
第7章 「もの」の顕現
第8章 人間という「症状」
第9章 立ち返るべき場所
終章 自己の収奪
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
33
読者としての限界をさらしてしまうと、著者の文体・説明は実に親しみやすくわかりやすかったにもかかわらず、ラカンに近づけたような煙に巻かれたようなそんな思いが残る。ただ、それをふまえて誤読を書きなぐるならばここにいるぼくのこの「主体」がけっして自明のものではないことというか、眼前に存在する世界それ自体をぼく個人がバイアスに基づいて把握していること(そこから、なんでもないものが欲望の対象としてこだわるべきものに迫り上がる)といったことを会得できたか、とは思う。「ぼく」の自明性がくずれるスリルを味わったと満足した2025/04/13
Shin
11
『野戦と永遠』で佐々木中節に酔い痴れた意外は接触を極力避けてきたラカン。シリーズ読破を目指す上で避けて通れず読んでみたけど半分強で挫折。「我あらざんところにて我思う」という人間存在定義の逆転はナルホドと膝を打ったものの、そこから延々とパラドクシカルなモティーフを弄ぶように裏返り続けて行く理路に、理解云々以前に神経が消耗してしまった。こういう「スタイル」が変に流行しちゃったのがポストモダンの一面なのだとしたら功罪あるなと。ともかく、フロイトに帰れ!というメッセージだけは分かったので勘弁して下さい。2012/09/29
ヒ
2
ラカン本で初めて欲望のグラフ出てこなかった2020/02/20
まめ
1
「ラカンの精神分析」の後に読んだからか、とてもわかりやすかった。 ラカンの活動や著作にもふれており、入門書としておすすめ。 「ないものを可能性のうちに与える」といった、今までの自分の感覚にはなじみにくい言葉も、何度も何度もしつこいくらいに繰り返して出てくるので、理解しやすい。2013/03/01
富士さん
1
斎藤環さんや大泉実成さんが2次元志向理解のための導きの糸としてラカンを利用されているのを見て、一体どんな思想なのか興味を持ちましてこの本を手に取りました。空洞があるからなんでも入れることが出来るのだ、ということだけなんとか理解できました。老子みたいだなぁ、と思いました。それにしても、人の心のあり方を知るのは重要なのかもしれませんが、あまりに患者の気配がしないのはどうなんでしょうか。哲学者ならいざ知らず、医療関係者として、これで何人の人が安寧を得ることができるのかにもっと関心があっていいのだと思うのですが。2013/01/14