内容説明
19世紀前半の北イタリアは、オーストリアの支配下にあったが、ナポレオンに同調する自由主義者たちが暗躍していた。コモ湖畔に館を構える侯爵マルヴェッツィは、謎の美男子オルフェオをスカラ座でデビューさせようとしていたが、何者かに殺されてしまう…。アガサ賞に輝く音楽歴史ミステリーの傑作長編。
著者等紹介
ロス,ケイト[Ross,Katherine J.]
米国東部のウェルズリー・カレッジ、イェール大学法学部を卒業して法廷弁護士となる。1993年、「ベルガード館の殺人」でデビュー。「マルヴェッツィ館の殺人」で’98年度のアガサ賞最優秀賞を受賞したが、’98年3月12日、ガンのため41歳の若さで逝去。著書は他に「フォークランド館の殺人」などがある
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感想・レビュー
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円盤人
5
十年以上も昔、某掲示板で、匿名のレビュワーが「うおおおーん! おもしろかったよぉーーん!!」と書き込んだ小説。それがなければこの作者と、この一作に出会うことはなかったろう。新本格ブームにあやかったかのような邦題。むろん「館もの」ではないが、19世紀イタリアを舞台に、英国の有閑貴族が伯爵殺人事件を追う。失踪した謎のオペラ歌手。恋とスリル。滑稽な脇役のドタバタなども盛り込み、冒険活劇の様相も呈する本作は、古き良き日の、しかし新しいワインが入った良質の探偵小説ではないか。何てこと、おもしろい! 下巻に続く。2018/02/01
あら
4
ジュリアンが大好きなのに、読みにくかった。とにかく読みにくかった。2024/09/02
ピエール
2
ナポレオンがイタリアまで手中に収めた後あたりの時代を舞台にした推理小説。上巻ではまだ犯人が誰なのかはさっぱり判らない状態(当たり前だけど)。貴族が毎夜のようにオペラに通い、ボックス席が社交の場になっている様子や、ボックス席でのルールなど、本当なのかどうかは知らないけれど、詳しくて面白い。推理そのもはまだ判らないのでさておいて、この時代の雰囲気を味わえるだけでも良いと思います。2013/03/11
ハルト
2
再読。シリーズ4作目(日本では3作目)。いいところで終わってる!謎の歌い手・オルフェオの正体がはたして誰なのか、そして犯人はやはり彼なのか気になる。2009/05/06
madhatter
1
再読。本シリーズ全てに対して言えることなのだが、物語を進める視点が地味に一定せず、唐突に転換する叙述の甘さが気に掛かる(例えば下巻P50・L4、なぜ唐突にルチアの主観が?)。ケストレル視点を主体にするのはいい。だが視点をそこから変えるなら、それに伴って章や節も変えるなど、厳密に区分した上で事件を追って行くべきではないだろうか。特に本作のような結末に至る場合は尚更だと思う。物語は面白いのだが、事件の性質に対し、叙述手法が些かアンフェア(下巻の感想参照)なため、個人的にシリーズ中ではあまり好きになれない作品。2010/10/16