出版社内容情報
京極 夏彦[キョウゴク ナツヒコ]
著・文・その他
内容説明
匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物―箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
487
前作と違い、突然と物語が始まる。しかも前作で語らなかった“ジェンダー批評”だ。フロイトは女性性を指すに“暗黒大陸”といった。つまり表面(表層)に対し、極めて複雑で曖昧模糊とした内面(深層)をもっている。そして言語理論を展開。あるイメージ対する言語には限界あり、本質自体には決して到達できず、その周辺を固めるだけで、いくら言葉を付け足そうとしても、逆に付け足すほどに中心から離れてしまう。つまり周辺の枠(箱)を創るにすぎない。本作でいえば『御筥さま』であり、それに女性性を加え『魍魎の匣』となる。2016/04/14
nobby
256
匣、箱、そして筥、四角より丸みを好む自分には筥か。一方で曖昧に人を惑いに導く魍魎という存在。合わさったタイトル『魍魎の匣』見事だ!匣に隙間なく入った美少女、バラバラ連続殺人、怪しき“穢れ落とし御筥様”、これら全く別物だが気になる事柄が、近代医学研究所という最も不気味な箱を舞台に融合していく。探偵小説なら茶番と自虐しつつ、あり得ない設定の数々をまたしても見事に納得させる。ラスト200頁での怒涛の謎解きは、10年ぶりの再読で徐々に心地よく思い出し、「ほう」と溜め息漏らして暫し余韻に浸る今時分…2017/07/04
bookkeeper
237
★★★★★ 再読。列車に轢かれた少女の病院からの消失と職員の殺害。バラバラ殺人と跋扈する怪人の噂…。 個々の事件の動機やトリックをいくら詳細に語っても、寄木細工のパーツから全体像が見えないのと同じで、組み上がった全体像の壮麗さが全く説明出来ない。 作中小説の壊れっぷり、刑事が現場に踏み込むシーンの凄惨さ、京極堂と渡り合う敵役との対決など、シリーズ屈指のテンションが300ページ以上続く。 引き込まれそうな、蠱惑的な彼岸の危うさにゾクゾクする。月の綺麗な夜に、匣を抱えた幸せそうな男と会ったら怖いな…。2018/07/06
takaC
229
明確な理由はないがシリーズ第二作『魍魎の匣』は未読のまま長いこと放置(すなわち積読)していたのだが邪な動機(ページ数稼ぎ)で読んだ。とても読み易く書かれているようでスラスラ読めるのね。でも持ち運びにはとても不便。次は絡新婦かな。 〜 魍魎 --- 形 三歳の小児の如し、色は赤黒し、目赤く、耳長く、髪うるはし。このんで亡者の肝を食ふと云。〜 今昔續百鬼・巻之下2018/05/12
さくりや
168
読書解禁だー!(テスト週間でできなかった悲劇。わら)。敦子の「兄貴」呼びが可愛い、榎木津の罵倒語のボキャブラリー面白い、京極堂の家で皆で駄弁っているところが好き。この辺りが癒しなんだけど、後味が不気味すぎた……。しかも複雑。でもそれがいい。京極堂が前回より感情の起伏があってなんだかほっとした。2016/02/27