内容説明
断熱材メーカーの常務が殺され、工場に勤める東北出身の内気な青年が容疑者に。大都会の人間の孤独を鋭く抉る社会派本格推理。『孤独なアスファルト』。動物園で発見された男の死体には熊の爪痕が。近くには新興宗教のバッジが落ちていた。謎解きの意外性に戦争犯罪の傷痕を絡めた異色作。『蟻の木の下で』。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mintia
10
「孤独なアスファルト」の感想は、当時、田代省吾みたいな田舎から出てきた青年は鬱積した重いがあったのだろう。 「蟻の木の下で」は、新興宗教が出てくるし、戦争が遠い昔でない時代の話で盛り沢山で楽しかった。2017/09/06
黒い森会長
3
「孤独のアスファルト」メーカーのワンマン常務が殺される。容疑者が浮かばず捜査は難航する。何度も現場付近に足を運ぶ刑事。オリンピックの前年、昭和38年頃の風景が懐かしかった。「蟻の木の下で」動物園の熊の檻の前で発見された男の死体には熊の爪痕があった。被害者の妻は新興宗教にハマっており、・・・。今なら「伝奇小説」のカテゴリーだと思う。2016/03/15
ケロたん
2
トリックよりも戦中、戦後の風俗が面白い。ニコヨンて調べないとわからないよ。2019/02/23
通りすがりのブッカー
2
『孤独のアスファルト』これは、東京が人口一千万人に発展する近代日本が舞台。日雇い労働者に、急ピッチで建設が進む社会問題が続発の東京。経済はなんと不況。目新しさは感じなかったし地味だったが、雰囲気で楽しめた。被害者は、東京に殺されたー。『蟻の木の下で』蟻の木が面白かった。戦争が動機に絡んでいる点も興味深い。が、後半かなりいい加減な偶然が続発。特に差し入れで毒殺ってのが酷い。盛り上がっただけに、変なところで損している。全体的に好きではあった。2012/12/07
nbnra
2
「孤独なアスファルト」…社会派本格。アリバイトリックをメインにしており、あるきっかけから事件の構図ががらりと変わるのは本格ものの醍醐味。「蟻の木の下で」…謎解き部分は今一つだが、ホワイダニットと意外な展開はなかなか面白い。2010/09/07