内容説明
唐津六万石小笠原家の世嗣長行がたどった波瀾の半生。わずか二歳で廃嫡の非運から、一転、土佐の雷公・山内容堂の推輓もあって、幕閣の中枢へと異例の昇進をとげた長行。その闊達な人間性と、国を想う熱誠。老中兼外国奉行として国難に対処する異色の合理主義者を描く表題作に、絶筆となった「山県有朋の靴」等五篇を収録。より高次な大衆小説を目ざした著者が到達した、歴史小説の記念碑的作品群。
感想・レビュー
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月夜のコオロギ
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文壇史で名前は聞いたことはあったが読むのは初めての佐々木味津三の本で、昭和5年から8年にかけて発表された短編を集めた一冊。壱岐守長行より小栗上野介は多少聞いたことがある程度にしか佐幕派について知らなかったので、これを読んでいかに倒幕派、尊王攘夷派による幕末という話の方ばかり読んでいたことに気づいた。作者は傾いた家業を立て直すために純文学を諦め、大衆文学で大量に書きまくって挙げ句に30代で過労死したというのも今回初めて知った。本にも出会いというのがあるのだと思った。2024/07/24