内容説明
大阪の富豪に殺人予告が届いた。差出人は蠅男。警備は厳戒をきわめた。しかし、それを嘲笑うかのごとく、富豪は天井に吊されていた。完全に近い密室に、煙のように侵入しうる犯人とは、いったい何者。名探偵・帆村荘六は、この不可能犯罪に敢然と挑み、怪人蠅男に肉迫する。猟奇的な発端から戦慄のラストシーンまで、昭和初期のエログロ・ナンセンスの雰囲気を濃密に漂わせた鬼才の代表的長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aquamarine
67
帆村探偵の登場はとても魅力的ですし、かなりショッキングな事件発覚から時代をあまり気にすることなく惹きこまれます。なんとなく伏線を探して読み進めていったのですが、読友さんたちに事前に釘を刺されていたように真相には仰天しました。問題作?壁投げ?いえいえ、立派な変格ミステリ、奇妙な味の分類だと思います。獏鸚を既読でその中でも化学的で怪奇的なものを好んだ私としては、この真相に思わず声をたてながらも妙な納得で受け入れました。でももう少し伏線が欲しかったかな。実は最後の列車見送りシーンがあまりにも変で妙に印象的です。2016/07/04
yumiDON
51
立ち上る煙から焼死体が発見し、蠅男なる怪人物から予告状が届き物語は始まる。蠅男という名前もそうだし、どこかおぞましさの片鱗を感じる出だしでドキドキしながら読み始めた本作。これは本格と思って読むと壁に投げることになります。怪奇エンターテイメント作品と思えば面白い。帆村さんがとにかく色んな意味で大活躍します。 個人的には面白かった、時代性も生かされていてそういう意味では、ありかな、と思う。2016/06/26
hanchyan@つまりはそういうことだ
35
なんかもういろいろと興味深すぎて一口三十回噛むように読んでたら一週間経ってた(笑)。こういう例えが適切かどうか自信がないが“明智VS二十面相”が“ゴジラ”だとするなら、本作は“ガッパ”とか“ギララ”的。「本家本元の傑作を越えてやるぞ」と大真面目になればなるほど本家とは趣を異にしていってしまう感じで(笑)そこがまたたまらなく愛おしい。CGの進化によりもはや「驚きの映像」は有り得なくなってしまったこんにち、逆に昔日の手作りSFXの方がヘンな言い方だが「リアルな造り物」的には各上に観えるような感じ、とも。(↓)2016/07/01
Yuki
28
エッセイ「ミステリ国の人々」より。名探偵・帆村荘六(名前はシャーロック・ホームズのもじり)が1930年代のグレート大阪を舞台に怪人・蠅男に挑む。ミステリでSFで活劇。大阪弁がちょっと胡散臭かったり「コントかよ!?」みたいなシーンもあったりしつつ、密室殺人や蠅男の正体という謎で読者をラストまできちんと引き付ける。表紙にあるとおりのエログロ・ナンセンスを存分に味わった。前述のエッセイで書かれていた、著者が笑いすぎて音読できなかったシーンは中盤くらいの自動三輪車をパクるシーンかな。2018/05/15
Kouro-hou
22
SF科学探偵帆村荘六シリーズの代表作。東京を拠点にする帆村さんですが、今回の舞台は戦前の大阪。そして敵は殺人予告をした上に被害者を密室でしとめる神出鬼没の「蠅男」。実は大阪出身の帆村さんの思い出話などのファンサもしながら、アクション有り、カーチェイス有り、被害者令嬢とのロマンス有り、帆村の入浴シーン有りとスペクタクル長篇に仕上がっております。ああ、密室殺人のトリックは海野先生的にはまったく正しいですが、ミステリだと思ってるとKOされますよ!w 他の海野長篇と比べても大変バランスが良く楽しめる娯楽作品です。2015/07/03
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