内容説明
あるときは危機一髪の白刃、またあるときは決意を鈍らせる人情の足枷。女賊の横恋慕、将軍家愛妾の純愛、さらには邪剣の使い手の逆恨みが、次々に雪之丞の前に立ちはだかる。しかし、闇太郎の侠気にも助けられ、雪之丞の復讐の刃は、一歩また一歩と親の仇に迫っていく。そして、ついに凄絶な最後の時がやってきた。映画や舞台の名場面でも知られる、奔放華麗、日本大衆文学史を飾る代表的長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨーイチ
30
昭和9年朝日連載。長谷川一夫と共に名前だけは知っていた。作者は当時の人気作家にして長谷川時雨の旦那。昔、時代考証の大御所で三田村鳶魚って人がいて、時代小説を散々にこき下ろし、中里介山とか吉川英治も例外では無かったとのこと。昔の人だから江戸時代や武家の知識があるだろうって思い勝ち(自分だけかな?)だが、そうでもないらしい。この作も大娯楽小説で多分「やられた口」だろう。大衆小説自体が近代の所産である訳だが。悪役は悪役らしく、善玉は二つ名付きで格好いい。底流には恋愛と芸術への信仰がある。2017/04/19
NICK6
8
おもしろい!まず最初に断言しておく。そのうえで読了後色々振り返り。表題は雪之丞変化である。はて?そんなに変化した?まず、復讐の決意は、師匠らに慎重さ周到さを求められ抑制気味、その手段と策は他者採用?。私は早々、巻き込まれる方々の方々へ関心シフト。皆さま、キャラ極上。一挙一動、目が離せない。「お初」。盗賊美女の濃厚な情念。転じて濡れた憎悪、殺意の悲哀。「浪路」。確信の恋、絆の永遠。そして覚悟。その全てを信じ愛しきった女の果て。そして極悪非道の「島抜けの法印」の涙。なんといってもこの三人の変化にこそ、泣く! 2025/02/09