内容説明
不治の病に冒されたピアニストのイーリス(IRIS)は、自分の才能を永遠のものとするため、クローンの娘スーリイ(SIRI)を産む。「あなたはわたし=わたしはあなた」だが、母娘(双子)の蜜月はやがて去り、スーリイは、コピーではない自前の生を求めはじめる―。「自分とは何?」を、究極の地平で問いかけるスリリングな物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
29
「二週間前、わたしの母で双子の姉、イーリスが死んだ」不治の病に冒されたピアニストのイリスIRISは自分の才能を永遠のものにするためクローンの娘スーリイSIRIを生む。「あなたはわたし、私はあなた」だが母娘の蜜月はやがて去り、スーリイはコピーではない自分の生を求め始める。2001/09/02
shikada
23
不治の病にかかった若き天才ピアニストが、自分の才能を永遠のものとするためにクローンの娘を産む。母であるイーリスIRISと、娘であるスーリイSIRI。スーリイはピアノの才能を受け継いでおり母を喜ばせるが、やがて「私は誰なのか?」との問いに直面し、母娘の間には徐々に不協和音が流れるようになる…。物語は、産み落とされたクローンの視点で語られる。娘は母に「わたしでありあなた」と言われて育ち、聴衆には「しょせんコピー」と蔑まれ、母の恋人に恋をする。いっときは誰よりも近しかった二人が、離別していく描写がもの哀しい。2020/10/18
paluko
10
区内の図書館にも、隣接区の図書館にも所蔵されておらずネットで古本を購入。神経難病に冒された天才女流音楽家が(ここで、クラシック好きな人なら「ん?モデルがいるのでは?」と思っちゃうかも)自分の才能を永遠に遺し伝えるべく強引な手段で自分のクローンを作成させる。しかもその名はSIRI。まあご本人の名前Irisを逆から綴っただけなんですが。ありえない未来設定みたいだけどクローンじゃない現実親子でも「自分が果たせなかった夢をわが子に」とか「先祖代々の○○を伝承する跡取りを」といった動機で子育てを遂行するケースは2020/11/05
やまはるか
4
クローン人間の誕生が認められた社会の未来小説。一卵性双生児は横並びで生きるが、クローンは親子の関係で時間軸を縦に並んで生きるため、様々な問題・葛藤が生まれる。この物語ではクローン人間は国家管理の下で生殖可能人口の0.32%に制限されている。これは自然が望んだ遺伝的多様性を崩さないためとある。クローンに関する倫理的問題にはあまり触れられていない、というか、クローンの倫理問題とは何だったろうと考えさせられた。2020/01/22
いしりば
3
二人の登り坂下り坂が重なるのはアルジャーノンみたい 短く出来事と独白が入れ替わるのでぶつ切りになる独特なリズム2022/11/08