出版社内容情報
【内容紹介】
人間・一休宗純の生涯を描く、漫画家・坂口尚の絶筆
「ハトがアンテナにとまってグルグルと鳴いた。まねてみた。不思議そうにハトは首をかしげた。坂口尚を思った。」――手塚プロダクション社長/松谷孝征
今からおよそ600年前、世はまさに戦乱の時代に風変わりな僧がいた。
権力に抗し、名誉や利益ばかりに執着する大寺の高僧たちをあざ笑い、伸び放題のヒゲ面に破れ袈裟をまとったこの僧こそ、風狂子と呼ばれた一休宗純その人である。
激動の日本中世史上、もっとも純粋に生きた僧侶・一休宗純。
諸国をめぐり様々な人々と出会い、年老いてもなお力強く生を謳歌し続けたその生涯を、今なお高い評価を受ける漫画家・坂口尚氏が描く歴史大河ドラマ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bo-he-mian
13
上巻での壮絶な自問自答の果てに「道」を見出した一休。しょせんは組織でしかない寺を飛び出し、空の下の人となる。これはいわばドロップアウトの思想で、今にして思えば、'60sのカウンターカルチャーが、東洋思想の影響を強く受けていたのは、根っこに似たものをもっていたからではないだろうか。もう下巻の一休は、ヒッピーにしか見えない(笑)。そして、様々なキャラクターたちが懊悩する様を、シンフォニーのように交え響かせながら、一つの物語へと昇華してゆく。坂口尚の天才性を、いまさらながらに見せつけられ唸った一本。2021/02/14
たまきら
6
上巻がだんなさんにとられてしまったので、下巻を読む。…何度も読んでいるので大丈夫。そしてまた新しい発見があったように思う。すごく染みる漫画です。2015/05/20
山像(漫画)
5
禅問答に興味があって少々調べていた時に、禅の概念を最高の精度で漫画として表現した大傑作という評価を見て気になってた。成る程、一休が悟りを啓くまでは滅茶苦茶面白い。重厚な歴史物語としての説得力、本編の美麗な作画にアート的にも優れた扉絵、全てが高品質。 ただ混迷の度を増し続ける社会でひたすら自由に、また権威筋を激怒させながら生きていく後半の展開は、それが悟りというなら確かにその通りで説得力はあるけれど、物語としてこれが是認できるかというとかなり難しい……。まあ納得しきれないところを残してこその名作ということか2014/09/21
袖崎いたる
4
座右の書と呼んだって、構わないんだろ?ーー人生の1冊と呼びたい革命の本。2019/07/11
ARGT
4
一休さんと言うと幼少期のトンチが有名だけども、それ以降の人生も破天荒に、しかしそれだけではない苦難の連続、それをここまで直球に描かれたものを実際にそれを受け止めてみる(受け止めきれたとは到底思えないが)とホント参りましたとしか言えない傑作。2013/03/17