講談社選書メチエ<br> 忘れられた黒船―アメリカ北太平洋戦略と日本開国

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講談社選書メチエ
忘れられた黒船―アメリカ北太平洋戦略と日本開国

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  • サイズ B6判/ページ数 304p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062586542
  • NDC分類 210.595
  • Cコード C0321

出版社内容情報

ペリーとハリスの間に来航したロジャーズとは何者か? その目的はどこにあったのか? 歴史の波間に没した「幻の艦隊」を引き上げる現在の日本史学は、ペリー来航を実際以上に過大評価しているといわざるをえない。これが、本書の立場です。ペリー来航が日本史にとって重大な歴史的事件であったとしても、それがそのままアメリカ外交の歴史にとっても重大な事件であったことを意味するわけではありません。にもかかわらず、日本人あるいは日本史の研究者は、ペリー艦隊の派遣がアメリカ外交史上でも重大事件であると思いこんでいたのではないでしょうか。
 アメリカにとって最大の目的は、東アジア貿易でイギリスに対抗すること、その手段として太平洋蒸気船航路を開設することにありました。だからこそ、その航路上に位置する日本列島が、石炭補給地、遭難時の避難港、そして新市場として着目されたわけですが、それはいわば「点」にすぎません。ペリーがやったことは「点」の確保であり、続く「航路=線」の開拓の模索がなければなりません。そして合衆国はたしかに、ペリー艦隊の派遣以外にも手を打っていたのです。
 アメリカ海軍は日本近海も含めた北太平洋海域一帯の測量を目的に「北太平洋測量艦隊」を派遣していました。司令長官は海軍大尉ジョン・ロジャーズ。この艦隊は1853年6月にアメリカ東海岸のヴァージニア州ノーフォークを出航しました(その7ヵ月前に、ペリー艦隊が日本へ向けてまさに同じ場所から出航)。さらに1854年12月には鹿児島湾、翌1855年5月には下田、そして6月に箱館を訪れています。しかも下田では、幕府に向けて日本近海測量の認可を求めるということもおこなっているのです。老中阿部正弘以下の幕閣は驚愕し、じつは開戦も辞せずという瀬戸際にまで追いこまれました。
 日本開国にかかわる幕末外交史研究において、この艦隊について検討されたことはほとんどありません。ペリーおよび1856年に来日した初代総領事ハリスについては必ず言及されますが、まさに「ペリーとハリスのあいだ」のの「ロジャーズ来航」はごく一部の研究者に知られるのみで黙殺されたかっこうであり、まさに「忘れられた黒船」といっていいのです。それはいったいなぜなのか……?
 本書は、これまでほとんど本格的に検証されることのなかった測量艦隊の、具体的な来日の経緯と国際環境について明らかにし、日本近代外交の起点ともいうべき開国の歴史を、これまでとは異なる観点で描きなおすことをめざします。

序 章 ペリー来航史観の陥穽
第一章 十八?十九世紀の太平洋世界
第二章 海原への「明白な天命」
第三章 わきあがる対日遠征論
第四章 もうひとつのアメリカ艦隊
第五章 ペリーの影
第六章 いよいよ日本へ
第七章 ロジャーズ来航
第八章 歴史の波間に
終 章 日米邂逅の世界史的意味


後藤 敦史[ゴトウ アツシ]
著・文・その他

内容説明

ペリーは去った。しかし…。日米和親条約調印後、すぐに鹿児島・下田・箱館にあらわれ、幕閣を恐慌に陥れた「もうひとつの黒船」を知る人は少ない。司令官ロジャーズの目的はなんだったのか?日本開国の経緯をアメリカの視点から検討し、歴史の波間に沈んだ「幻の艦隊」を引き上げる!

目次

序章 ペリー来航史観の陥穽
第1章 十八~十九世紀の太平洋世界
第2章 海原への「明白な天命」
第3章 わきあがる対日遠征論
第4章 もうひとつのアメリカ艦隊
第5章 ペリーの影
第6章 いよいよ日本へ
第7章 ロジャーズ来航
第8章 歴史の波間に
終章 太平洋からみる日本開国

著者等紹介

後藤敦史[ゴトウアツシ]
1982年福岡県生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位修得退学。日本学術振興会特別研究員、大阪観光大学国際交流学部専任講師を経て、京都橘大学文学部准教授。博士(文学)。専攻は幕末政治・外交史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Porco

24
中国への大圏航路(最短距離の航路)を開設するため、アメリカが派遣した北太平洋測量艦隊について書いています。ペリーが日米和親条約を結んだ後に日本を訪れ、同条約についての日米間での認識の違いに気づき、後のハリスによる条約改定につながった艦隊でもあるとのこと。幕末外交史に興味があるなら、ぜひ読まれるといい本だと思います。2017/12/21

BLACK無糖好き

16
幕末の日本開国史では、ペリー艦隊の来航と、ハリス総領事の来日が中心に論じられるが、その間に生じた北太平洋測量艦隊の「ロジャーズ来航」については、あまり注目されてこなかった。著者は十八世紀以降のアメリカの太平洋進出構想を分析し、ペリー艦隊と北太平洋測量艦隊の関係や、幕府の対応を一次史料を踏まえながら検討し、ロジャーズの申立てに対して幕府が下した重大な決断の背景や、北太平洋測量艦隊の活動が、なぜ歴史の上で忘れ去られたのかを解き明かしていく。従来の幕末日本開国史に新たな一面を加える極めて興味深い一冊。2017/08/07

穀雨

3
前半部分では18世紀以来のアメリカの北太平洋戦略の展開が、後半部分では黒船来航の1年後に海図作成のため日本沿岸を測量したアメリカ艦隊の軌跡が、それぞれ描かれている。いずれも黒船来航の裏面史といった趣で、知らないことばかりだったのでとても興味深く、勉強になった。2017/11/11

かろりめいと

0
本国のアメリカでも、幕府が大騒ぎした日本でも、歴史から忘れられたままであった「アメリカの北太平洋測量艦隊」というものがあった。太平洋版マニフェストデスティニー。ラッコからクジラへ。19世紀前半のアメリカの太平洋政策がよく分かりました。面白かった。2019/03/15

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