出版社内容情報
「平民宰相」の生涯を描く初の本格評伝。南部藩に生まれた少年が、新聞記者そして外交官として頭角を現し、政治の世界に踏み込むまで厖大な史料を歴史研究者としての確かな眼で読み込み、伊藤博文や山県有朋、昭和天皇など近代日本をつくってきた人々の評伝を著して高い評価を得てきた著者による、渾身の書き下ろし新作。「平民宰相」として知られる原敬の65年の生涯を描く、本格的評伝。上下全2巻のうちの上巻。
原敬といえば、おもに初の本格的政党内閣を実現し、薩長藩閥政治の克服に努めた東北出身の政治家としてのみ語られることが多いが、著者によれば、原の政治家としての特色は、外交や内政に高い理想を持ち、それが当時の状況に合致していたこと、またそれらを実現するための手法やタイミングを知り尽くしていたこと、にあるという。また、ジャーナリスト・外交官・企業経営者など多彩な顔を持ち、そこで吸収した見識を元に一貫して「公利」という概念を重視し、第一次世界大戦後の世界を見通して新たな日本政治の道筋をつけた、ポスト「元勲世代」のもっとも偉大な政治家だったのである。
上巻では、盛岡での誕生から、フランス語を学び、新聞記者として見聞を広めたのちに外交官として、さらに大阪毎日新聞社長として活躍し、陸奥宗光の知己を得て政治の世界へと進むまでの前半生を描く。
はじめに―原敬を考える意味
第一部 青春編
第一章 維新後の没落―南部藩の少年の成長
第二章 学成らざれば死すとも還らず―苦学・キリスト教・司法省法学校
第三章 自己確立への模索―中江兆民塾から『郵便報知新聞』記者時代
第四章 外交を深く考える―『大東日報』主筆
第二部 上昇編
第五章 新進気鋭の外交官―天津条約と伊藤博文との出会い
第六章 パリ公使館時代の成長―国際法、欧州の政治・外交と文化を学ぶ
第七章 陸奥農商相に心酔する―農商務省改革と初期議会
第八章 陸奥外相の腹心―外務省の制度改革
第九章 朝鮮政策を固める―日清戦争への道
第一〇章 外務次官・朝鮮国公使として―日清戦争後の転機
第一一章 危機を乗り越え幅を広げる―陸奥宗光の死
第一二章 新聞経営のやりがい―『大阪毎日新聞』の社長
第一三章 新しい家庭を作ろうとする―浅を「妻」とする
第三部 熱闘編
第一四章 伊藤への不信―立憲政友会創立に参加
第一五章 念願の初入閣―逓信大臣の実力
第一六章 政友会の掌握から政党政治家へ―日露戦争前の山県有朋閥との闘い
第一七章 初めての総選挙への自負―盛岡市からの初出馬と圧勝
第一八章 新聞経営の意地―『大阪新報』社長の非戦論
伊藤 之雄[イトウ ユキオ]
著・文・その他
内容説明
朝敵・南部藩に生まれながら、「公利」と「外交」を重視し、ポスト元勲世代をリードした「平和宰相」原敬伝の決定版。上京して中江兆民に「フランス学」を学び、新聞記者から外交官に転じた天津やパリで活躍した原は、陸奥宗光の腹心となり政界へ進む。大阪毎日新聞社長として経営手腕を揮った後、立憲政友会創立に参加し、首相・伊藤博文のもとで初入閣する。
目次
第1部 青春編(維新後の没落―南部藩の少年の成長;学成らざれば死すとも還らず―苦学・キリスト教・司法省法学校;自己確立への模索―中江兆民塾から『郵便報知新聞』記者時代へ ほか)
第2部 上昇編(新進気鋭の外交官―天津条約と伊藤博文との出会い;パリ公使館時代の成長―国際法、欧州の政治・外交と文化を学ぶ;陸奥農商相に心酔する―農商務省改革と初期議会 ほか)
第3部 熱闘編(伊藤への不信―立憲政友会創立に参加;念願の初入閣―逓信大臣の実力;政友会の掌握から政党政治家へ―日露戦争前の山県有朋閥との闘い ほか)
著者等紹介
伊藤之雄[イトウユキオ]
1952年、福井県生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。現在、京都大学大学院法学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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