内容説明
日本のうたとして現在も関心を集める唱歌は、いかなる歴史の中で生まれたものだったのか。「蛍の光」「仰げば尊し」といった“名曲”から「鉄道唱歌」「公徳唱歌」「工業唱歌」など暗唱による唱歌教育のために作られた曲まで、それらの数々の唱歌の作詞に関わった伊沢修二、稲垣千頴、大和田建樹などの人物たちは、近代の日本語とその「文法」も同時に模索していた。あらゆる分野で「西洋」を受容する必要に迫られ、同時にあらたな「日本」を模索していた明治という近代化の時代を、唱歌と国語という視点で読み解く試み。
目次
第1章 国楽創生
第2章 文法の発見
第3章 唱歌と文典
第4章 装置としての唱歌
第5章 暗唱されるものの内実―新体詩と唱歌
第6章 明治近代化と文法・唱歌
著者等紹介
山東功[サントウイサオ]
1970年大阪市生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、大阪府立大学人間社会学部専任講師。専攻は日本語学・日本思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅん
7
日本における音楽教育のさきがけ、井沢修二が吃音矯正も手がけていたという事実の提示が、本書の主題を予告している。すなわち、唱歌と国文法という明治期に確立された形式が、国家体制の浸透させるための規律の装置であったということ。唱歌にも国語にも、「体に記憶させる」という機能が強調されてたということ。国文法の覚え方を延々と歌に乗せた唱歌が存在したように、両者は交差している。この交差は、今の(国家から離れたように見える)文学や音楽にどのように作用しているか。そのあたりのことに関心がある。2021/12/03
hika
2
日常的な「言葉」を「国語」にしていくといくことの日本的実践の一幕。文法の確立との関連そして、国学者と近大の教育という観点からも興味深いところが多々。2015/08/13
またゆき
2
明治の国語教育には文法が必要であり、暗記装置としての唱歌もまた国語教育に必要であったって話。 文法唱歌や堺水道唱歌なんてすごい唱歌の話や、明治には「いろは歌」ではなく、文法的な「あいうえお」が求められていたって話が印象的2012/07/31
ほたぴょん
1
言われないと気づかないもので、明治時代に学校教育というものができ、そこで西洋に倣って音楽を教えることになるまで、日本では音楽教育というものはほぼ存在しなかった。そのことを教えられた。そうして生まれた唱歌が、一面では道徳、文法教育の側面を持たされたというのは、現代の国語教育はその一面、道徳教育に堕しているという石原千秋先生の指摘を思い起こさせて興味深い。「昨日の敵は今日の友」という言い回しは、佐佐木信綱が作詞した「水師堂の会見」という唱歌が初出。乃木希典とステッセルの旅順の会見を歌ったものだとか。以上備忘。2022/05/12
かもはし
1
五線譜に描いた夢展でちょっと興味がわいて読んでみた2013/12/04
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