内容説明
軍閥の長の父、国共合作の立役者の子。「傀儡国家」=満洲国総理の父、反日活動家の子。「売国奴」と「英雄」の運命を分けたものは何か。運命の地、満洲を舞台に、歴史の転変に翻弄された五組の父子の数奇な生を描く。
目次
第1章 張作霖と張学良(張学良の成育環境;郭松齢との出会いと別れ;爆殺事件;満洲事変の屈辱)
第2章 張景恵と張紹紀(豆腐屋からの立身;国務総理;捕虜から戦犯へ;戦犯管理所での生活)
第3章 王永江と王賢〓(い)(剛毅な実務家;「保境安民」;軍隊の壁;実務官僚の系譜)
第4章 袁金鎧と袁慶清(科学落第生の逆転;袁慶清の苦悩と覚悟)
第5章 于冲漢と于静遠(語学堪能者の宿命;「大漢奸」への道;于静遠の幻想)
著者等紹介
澁谷由里[シブタニユリ]
1968年生まれ。日本女子大学文学部卒業。京都大学大学院博士課程修了。現在、富山大学人文学部准教授。専攻は中国近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みなみ
5
「漢奸」と呼ばれた人物の二代目まで描く評伝。最初は張作霖と張学良。まあそうでしょう。汪兆銘とか来るのかと思ったら、満州の官僚や張作霖グループといった満州を巡る人たちでまとまっていた。日本とは世間の「二代目」の捉え方が違ったり、科挙制度の在り方と影響についても考察されたり、中国人社会とはどういうものなのかを知ることができて良かった。周恩来が主導した戦犯の「再教育」についても触れられており、人物の評伝だけではない。KindleUnlimitedで読了。2025/02/08
おらひらお
3
2008年初版。5組の親子(張作霖・学良、張景恵・紹紀、王永江・賢韋、袁金鎧・慶清、于冲漢・静遠)を取り上げ、張作霖政権期、満州国期、満州国崩壊後の漢奸期の変遷を見ていく。5組ともそれぞれ特徴があるものの、ページ数が足りず選書としての限界を感じた。張作霖の成長過程や人としての器が垣間見られたのは興味深い。また、現在の体制を絶対的に正しいとする中国では、内容はどうであれ、満州国関係者は許されざるものとして歴史に翻弄されているのが悲しい。日中双方向からの満州国研究が求められるが、無理かな。2011/09/21
②
1
袁金鎧や于冲漢等漢奸と呼ばれる人々に焦点を当て、各人の概略についてまとめた一冊。2015/12/23
Takeshi Kubo
1
本書では、満洲事変前〜満洲国崩壊に至るまでの期間、現地人政治家や軍閥のトップといった人物について彼らがどのような経歴を持ち、そして激変する情勢に如何に対応したのかについて、父子という枠組みから論じられています。この辺りの時代を研究している身ですが、現地人について全くと言ってよいほど知らなかったので、非常に参考になりました。2014/01/10
コカブ
0
満州国に関わった現地勢力を扱った話。張作霖・張学良親子(奉天軍閥)、張景恵・張紹紀親子(父は元張作霖の馬賊仲間で満州国の国務総理になり、息子は共産党に内通していたために戦後も日の目を見た)、王永江・王賢い親子(父は奉天軍閥の元で実務官僚を勤め、息子は満州国で官吏となった)、袁金鎧・袁慶清親子(父は奉天軍閥の元で官吏となり、息子も満州国の官吏となった)、于沖漢・于静遠親子(父は日本語を解したことから日本との交渉窓口となって満州国建国にも参画し、息子は満州国で官吏となった)を扱っている。2014/06/15