内容説明
わずかな史実から、いかにしてスーパーヒーローは生まれたか。『今昔物語集』の説話から説経節の「狐の子伝説」まで、また歌舞伎から現代の伝奇小説・マンガの美貌の貴公子まで、刻々と変貌する「晴明現象」に託された人々の心性を探る。
目次
第1章 それは『帝都物語』から始まった
第2章 院政期における「晴明現象」
第3章 近世初期の晴明―狐の母の物語
第4章 平安京は「四神相応の地」か
第5章 時代のなかの晴明
第6章 晴明の「敵役」たち
第7章 近代・現代文学における晴明イメージの変転
著者等紹介
田中貴子[タナカタカコ]
1960年、京都府生まれ。奈良女子大学文学部卒業。広島大学大学院博士課程修了。現在、京都精華大学助教授。博士(日本文学)。専門は、国文学
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感想・レビュー
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真理そら
60
晴明が自在に式神を操って京を守ったなどの伝承をそのまま信じている人、晴明が白皙の青年だと信じている人にはショックな内容かもしれないが、そもそもそんなことを大真面目に信じている人は少ないと思われるがどうだろう。葛の葉伝説との関連で晴明の生誕地は大阪阿倍野区の安倍晴明神社のあたりということになっている、この小さい神社はかなり古いので個人的には信じたい気分だ。2020/07/23
Tomoko 英会話講師&翻訳者
3
安倍晴明ブームを検証する本。いろんな本からの引用と解説も。「恋しくば たずねきてみよ和泉(いずみ)なる 信太の森の恨み葛の葉」2016/05/26
霹靂火 雷公
2
斎藤英喜『安倍晴明 陰陽の達者なり』を読むつもりだったが、序文で先行研究として名指しされていたのが気になり、こちらを先に通読。2000年代初頭までの先行研究の総決算ともいえるまとまりで、読みやすかった。志村有弘『平安京のゴーストバスター』や晴明神社編『安倍晴明公』の年表にも目を通したい。2019/01/08
和沙
2
つまり賀茂光栄と芦屋道満が要チェック、と。おじいちゃんの晴明といえば、『少年陰陽師』に出てましたね。あと夢枕先生の道満って「のほほん」キャラだったっけ…?2012/01/10
NyanNyanShinji
1
この本が書かれた2003年頃は夢枕獏原作の小説が漫画や野村萬斎を主人公とした映画が作られ、中々な安倍晴明ブームだった。著者が教鞭をとる大学でこれらメディアの影響を受けた学生に、晴明の実像を話すと「そんな話聞きとうなかった」と幻滅するらしい。 こう言ったブーム(本書では『現象』)は過去二度あった。一つは中世の入口の院政時代に説話において式神達を使う者として。もう一つは近世において狐である葛の葉の息子として。本書は其々の時代における安倍晴明がいかに消費されたのかを克明に記している。2024/04/09