内容説明
世界のありのままを見たい、その土地で飲んだり食べたりしたい。地を這うようにオートバイや車で走った25万キロ、50ヵ国の旅―。真夜中のボリビアのジャングルで場げてもらった鶏肉、マニラのスラムの少女がごちそうしてくれたスパゲティ、凍えるようなパミール高原で食べた熱い饅頭…。苛酷な環境に生きる人ほど優しく、辺境の地の貧しい食べものがおいしいのはなぜだろう?世界を駆ける作家が辿る、数多の「一宿一飯」。
目次
第1章 地の果ての涙メシ(辺境のダイニング;地の果ての涙メシ ほか)
第2章 アメリカの馬鹿メシ(偉そうなアメリカの骨の髄;ファストフード帝国主義 ほか)
第3章 荒野の喧嘩メシ(漢族料理vs.清真料理;イスラム料理にうんざり ほか)
第4章 立ち止まって一杯飲る(グラスの中の物語;樽の中の人生 ほか)
第5章 困った時の自腹メシ(越境する日本の味;日本食は外交官 ほか)
著者等紹介
戸井十月[トイジュウガツ]
1948年、東京都に生まれる。イラストレーター、フリーライターを経て、作家として活動。そのかたわら、映画監督、ドキュメンタリーディレクターとしての顔も持つ。1983年、オートバイで北米大陸縦横断。以降、20年間で走行距離は25万キロを超える。1997年より五大陸走破の旅を始め、2001年、三大陸めのアフリカを縦断
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感想・レビュー
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ジュースの素
6
編集者と言うのは作家の文章をどれくらい管理するものなのか。いつも思うのは 戸井さんの文章があまりにも無駄がなくすっきりと上手いから。お陰で途中で放棄する事もなく きちんと把握出来るし、読後感が非常にいい。表題から この本は食に関する話ばかりかと思えるが その国の文化にまできちんと触れていて、特にアメリカへの食から見た悲観的な評価は拍手モノ。カザフやモンゴル族の羊料理は塩で茹でるだけなので日本から持参したエバラ焼肉のタレが非常に良かった!とか。 実は私もモンゴル旅で同じ事をした。この本を読むより前の話だ。2017/05/15
カワセミ440
5
一昨年亡くなった戸井十月さんの食と旅に特化した本。殆ど『越境記』シリーズ4巻で読んだ気もするけど、改めて戸井さんの食を含めた色んなモノに対する拘りを感じます。相変わらず米国、その文化や政治的な思想・姿勢まで好きじゃないんだなって。確かにアメリカの食って大雑把で甘すぎて油っぽ過ぎて繊細さが全くないところは戸井さんの言う通りだ。ゲバラやカストロが至るところに出てくるのも米国に対するキューバ贔屓な戸井さんだ。こういう尖がったオヤジがいなくなるのはホント寂しいね。戸井さんの優しい遠いまなざし、もう見れないんだな。2015/11/09
まつ
4
東京の大久保生まれ、オートバイや車で地を這うように旅をする作家は自分の価値観をしっかりと持ち、とても逞しい。宿も食もピンからキリまでを知り、砂漠やサバンナでのビバーク、クルーザーでの海上生活も楽しみ、フィジー島に家を持っている。一章を割いてアメリカ流の画一的なファーストフード文化を批判し、画一化した世界なんて旅する価値もないと言い切る。私もその通りだと思う。時にユーモアを交えながら短く坦々といろいろな世界のことを語っていく本書のスタイルは前に読んだ小田実の『何でも見てやろう』を思い出させた。2019/04/16