内容説明
「老いる」ことを人生の大切な課題と考える人が急に多くなった、と河合隼雄はいう。本書は、臨床心理学の第一人者が、110のはなしを通して、誰もが自分のこととして、また身近な人のこととして直面する切実な課題に迫る。老人は何もしないから素晴らしい、「終わり」を考える「はじめ」の練習を、等々、これまでの老年観を一新させ、これからの生き方を示唆することばに満ちた一冊。
目次
その1 未知なるもの(話がちがう;逆転思考;「うち」に帰る ほか)
その2 癒されるとき(良寛の恋;趣味を「遊ぶ」;トロのユーモア ほか)
その3 自分に立ちかえる(グリムの「寿命」のはなし;白髪の発見;広さと深さ ほか)
その4 人生の奥行き(耳垢伝説;「こんび太郎」の教え;薬の飲み方 ほか)
その5 見えてくるもの(ユングの死夢;「長老の教え」が教えたこと;心の届くちょっとしたものの言い方 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Take@磨穿鉄靴
70
個人的な話だけど長い事絶縁状態にあった母親と再び交流をもつようになりその際に母親の本棚にこの本があり手に取る。何やら付箋がたくさん付いていた。で母に断りこの本を借りる事に。でそのまま半年位積んでしまっていた。本に付箋を付けるのは自分も同じ。付け方も似ていてよくある事なんだろうけど親子なんだなと少し親近感がわく。付箋が付いてる頁は丁寧に読み直したり自分が気になった箇所には自分も付箋を付けた。自分の付箋は安い不透明の物だが母の付箋はカラーだけど透明のやつで下の字が読めて便利だった。オレも今度買うよ。★★★☆☆2018/12/13
ネギっ子gen
65
「老いる」についての110のコラムと、多田富雄氏との対談を収録。巻頭の「話がちがう」より。<人生50年と教えられ、そろそろお迎えでも来るかと思っていたのに、あと30年あるというのだ。そんなことは考えてもみなかったことだ。昔も長寿の人がいたが、それは特別で、それなりの生き方もあった。ところが今は全体的に一挙に人生競争のゴールが、ぐっと遠のいてしまった。こう考えると、現代の「老い」の道は、人類が今まで経験していなかったことであることがわかる。“みち”は未知に通じる。老いの道は老いの未知でもある>。確かに……⇒2024/01/22
Shoji
64
1991年に書かれた本。今とは時代が随分違う。人生80年のつもりで生きてきて働いてきたが、普通に100年も生かされる時代。現代の老人、特に後期高齢者の方は、処し方が分からず戸惑っているのではなかろうか。この本は、「老い」を前向きに受け入れるツボを分かりやすく書いています。肩肘張らずに読めばいいと思います。思わず、二度読みした箇所がありました。子供の詩の引用ですが、「おじいちゃんが死んだ日に赤ちゃんが生まれた。どちらも(肌が)同じ色をしていた。」まさにその通りだ。2018/05/08
臨床心理士 いるかくん
55
含蓄のある言葉で「老い」についてさらりと語る、軽妙なエッセイ。2014/11/16
i-miya
54
2013.11.28(11/28)(初読)河合隼雄著。 11/26 (河合隼雄) 1928、兵庫県生まれ。 京都大学理学部卒。 臨床心理学者。 京都大学名誉教授。 国際日本文化研究センター所長。 (刊行)=読売新聞社、『老いのみち』1991.09。 (カバー) 110の話を通して誰もが自分のこととして、あるいは、身近な人のこととして直面する切実な諸問題に迫る。 老人はなにもしまいから素晴らしい。 (参考・取り上げた論文) 鶴見俊輔『家の中の広場』、埴谷雄高『雁と胡椒』(1990)、2013/11/28