出版社内容情報
岸本 佐知子[キシモト サチコ]
編集/翻訳
内容説明
喜びと驚きの、選りすぐりのアンソロジー。岸本佐知子の「網」にかかった愛すべき11の短編。
著者等紹介
岸本佐知子[キシモトサチコ]
1960年生まれ。翻訳家。著書に『ねにもつタイプ』(講談社エッセイ賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
82
コロナ初期に世界のどこかで起きていたかもしれない物語。後になって、あの時は みなどうかしていたのだ。犬も猫も鳥も魚もみんな殺してちょうだい。それに反対する人も殺して。そんなことを言う妻ではなかった。感染症の犬に噛まれて娘を亡くし、塞いでいた妻。無職でSNSばかりしていた叔父がどうしたわけか、大事な人を守るためだからと犬を殺す運動を呼びかけ扇動する。感染してもいない犬まで殺そうと。嫌がる飼い主を問題人物とふれ回る。集団で一人を責め糾弾していく様はフェイクの正義による作られた悪の過激な断罪となり暴走していく。2023/07/07
澤水月
64
亡骸スモーカー泣くほど好き。私は髪フェチなので、本当に伸ばした髪には念、思い、悲しみも喜びも全て籠っていると感じている…断ち切れないから長く伸ばす。よくSFで網膜や移植臓器に記憶や癖が宿るなどいうが、よくこの着眼点で書いたなぁ。こんな題名だけど切なくてエロティックさも秘め、現場は火葬場という究極の忌み場、すごい掌編なのに。もう一編の体内生物ものも良かったしアリッサ・ナッティング覚えておく。ほかナチの悪夢「三角形」も素晴らしかったし安全航海は今私の抱えてる苦しみが少し減じる気がして楽に。合う小説は救済2016/06/20
伊田林 浮刄
59
★★★☆☆こうやって新たな作家さんに出逢えるのはいいこと。なんでも編訳者が子どもの頃に見かけた魚の行商のお婆さんよろしくそのときどき網にかかったこれぞという11作品を集めたそうな。だからジャンルも雰囲気もまちまち新人もいれば大御所もいるとのこと。全編とおしてUS版ハルキワールドかはたまた小川洋子かみたいな(適当でいいかげんな例えです)恥ずかしながらミランダ・ジュライしか知らなかった僕みたいな人はあとがきから読むことをおすすめします。お気に入りは表題作のほか「ロイ・スパイヴィ」「アリの巣」「家族」「三角形」2017/02/11
りつこ
55
面白かった~。ミランダジュライの作品が良かったなぁ。ミランダの文章と岸本さんの翻訳が合ってるんだろうなぁ。特に最後の一文には痺れた。何か意図があって組まれたものではないようだけど絶妙のセレクションでさすがだ。いかにもな「アリの巣」や「三角形」も良かったし「赤いリボン」もよかった。「安全航路」はどこかで読んだ覚えがあるんだけどなんだったっけ。いずれにしても岸本アンソロジーにハズレなし。2016/04/19
emi
54
通常翻訳ものは3倍の時間がかかるのに、あっという間に読めてしまった稀有なアンソロジー。すごい、この本は。突飛だし、おかしいし、不気味だし、背筋凍るし、それでいて切ない。そのバラバラの読後感を全部味わえて、それでいてものすごく面白い本読んだなって思えました。本当にチョイスも訳もとてもバランス良かったです。表題作の「楽しい夜」や「ロイ・スパイヴィ」なんて、ほんと切なかった。でも、飛び抜けて好きです。何も知らずに読んだから、とびきり心を掴まれたのかもしれない。何が出るかは、読んでからのお楽しみ。ぜひお試しあれ2016/05/21