出版社内容情報
日本海沿いの町で、母親とその内縁の夫との家庭で育った彫刻家を目指す青年の成長を、さわやかに、滋味深く描いた新しい青春小説!彫刻家を目指す美大生の新太郎は、日本海沿いの町で、母親とその内縁の夫「じいちゃん」の3人での家庭で育った。実の父親、「倫さん」と親しく交流を続けている。複雑ながら穏やかな関係を保つ家族だったが、やがて、彫刻の修業のために、新太郎が留学を考えはじめたころ、小さな亀裂が走り始める。
石田 千[イシダ セン]
著・文・その他
内容説明
東京の美大で彫刻を学ぶ大学院生「シン」は、母と、その内縁の夫「じいさん」と新潟の海辺の町で育った。一方、島に住む実の父親「倫さん」とも親しく交流を続けている。複雑ながら穏やかな関係を保つ家族だったが、シンの心には小さな違和感が芽生えはじめる…。
著者等紹介
石田千[イシダセン]
1968年福島県生まれ、東京都育ち。國學院大学文学部卒。2001年「大踏切書店のこと」で第1回古本小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
119
新潟の日本海側の町が舞台。主人公は東京で美大生だが物語はほぼ彼が実家にいる間に進行する。私はこういう母親は嫌いだ。常々思うのだが子供に対して母親の方がより権利があるわけではない。子供には父と母は等しく大切である。母親が秘密をため込むと子供は出生の秘密を知ることができない。それを知らせる同級生に冷たい言葉を吐く母親は本当に嫌。結局彼女の生き方に周りを巻き込む。それでも母を慕う主人公も不甲斐ない。しかし作品は好きだ。本当の父親の真の強さがすべてを支えていて、その強さを主人公が受け継いでいけたらいいなと思った。2016/05/15
nico🐬波待ち中
101
元夫と今の夫(共に内縁関係)がまるで親戚のように親しく付き合い、その両者の間でどこまでも自由にマイペースに振る舞う母。そんなヤヤコシイ関係を大学院生の一人息子・シンも普通に受け止めていた。この母達の割りきった関係にはとても驚いた。それに対して、全てを丸ごと受け止める元夫の家族達の温かさが身に染みる。そしてラストにかけての、今の夫を巡る急展開には更に驚かされたけれど、自分を信じて待っていてくれる人がいることの心強さをしみじみ有り難いと思えた。人は帰る場所があればこそ、安心して飛び立つことができる。2018/04/16
starbro
89
【第154回芥川賞】にノミネートされたので、先物買いで図書館に予約しました。結果受賞しなかったため、直ぐに読めました。石田千、初読です。新潟が小説の舞台になっていたので、新潟出身かと思ったら、何故か福島でした。文章の上手さやセンスは感じますが、あまりインパクトがないところが、3回芥川賞にノミネートされて受賞なしの結果なのかも知れません。新潟の島(佐渡島等)のイカが美味いことは確かですが、新潟、湯沢等地名を具体的に出しておきながら、島だけを何故固有名詞にしなかったのかが疑問です。2016/01/27
chimako
84
最後は勢いがあってシンが向かっていく物が読み手にも見えてきた。じいさんが残した木に、何かが宿っていたのか、思わぬ出来事でシンが一皮剥けたのか。「思い切り彫ればいい」と応援したくなった。雪深い新潟の田舎町。複雑な家庭に育った美大生のシン。母は籍を入れずシンを産み、父とは離れて暮らすが深い親交がある。母は違う人とまた籍を入れず一緒に暮らす。それがじいさん。そこが家。父親だけが同じ弟と同じ寮で学生生活を送り、弟はすでに社会人。自分は院へ進み彫刻を模索中。会話に「」がないのは意図があるのだろうが、奇を衒いすぎか。2020/06/18
ナミのママ
67
初読み作家さん。芥川賞候補作としてはとても読みやすいように思います。私は好きなストーリーでした。複雑な家庭で育ったけれど、攻撃的でなくあやふやな人間関係。海辺の町と島、都会での生活。危ういながらもバランスがとれていたものが、ぐらついていくその感覚がなんともいえず伝わってきます。我が家の家族も口数が少なく、争うことがないから、余計にわかるのかもしれませんが・・。他の作品も読んでみたくなりました。そしてどんな作家さんなのかな?興味ありです。2016/01/10