出版社内容情報
戦後の清算として水俣へ慰霊にでた天皇と美智子皇后。現地で迎えた作家・石牟礼道子。水俣病を通して理解しあう二人に起きた「奇跡」2014年の歌会始で天皇が詠んだ一首。
慰霊碑の先に広がる水俣の 海青くして静かなりけり
2013年10月、「全国豊かな海づくり大会」のため水俣をはじめて訪れた天皇皇后にとり、その旅は大会への参加以上に、戦争にひきつづき果たしてきた日本の惨禍への慰霊が目的だった。水俣でおきた『奇跡』――、天皇の政治利用と非難されることを自ら覚悟のうえで、渋る宮内庁幹部を動かし、極秘のうち実現した天皇皇后と胎児性患者や語り部の会11人との面会。それは美智子皇后と作家・石牟礼道子、「ふたりのみちこ」の深い絆によりもたらされた。
作家・池澤夏樹氏が個人編集し大評判をよんだ『世界文学全集』の中で、日本作品から唯一選ばれたのが、石牟礼道子の『苦海浄土』(講談社文庫)だった。本を通して深い信頼関係を築いた「ふたりのみちこ」が、半世紀以上にわたり水俣病と向きあった人々からの「許し」を得るまで。その過程には、水俣病の原因をつくったチッソの社長が雅子皇太子妃の祖父だったという、乗り越えなければならない複雑な経緯もあった。
東京で、水俣で、深く意志を交錯させたふたり。パーキンソン氏病をわずらい闘病中の石牟礼道子は、天皇皇后に面会する患者代表にこう伝言したという。「天皇陛下に伝えてください。大会で放流したヒラメは、もう水俣病になりませんか?」
1965年に熊本の同人誌で知り合って以来、水俣病に石牟礼とともに取り組んできた作家・渡辺京二が語る、政府と公害企業との闘争史も興味深い。
序 章 天皇の言葉
第1章 二人のミチコ
第2章 会いたい
第3章 精霊にみちびかれて
第4章 もだえ神様
第5章 闘う皇后
終 章 義理と人情
高山 文彦[タカヤマ フミヒコ]
著・文・その他
内容説明
天皇皇后、言霊の海へ。水俣病患者との歴史的対話。そこには数々の秘められたドラマがあった。皇后美智子と石牟礼道子の魂の交感、渡辺京二の愛と献身、祈りのこけしの行方とは―。戦後70年、水俣は癒されたのか。
目次
序章 天皇の言葉
第1章 ふたりのミチコ
第2章 会いたい
第3章 精霊にみちびかれて
第4章 もだえ神様
第5章 闘う皇后
終章 義理と人情
著者等紹介
高山文彦[タカヤマフミヒコ]
1958(昭和33)年、宮崎県高千穂町生まれ。法政大学文学部中退。2000(平成12)年、『火花 北条民雄の生涯』で、第二十二回講談社ノンフィクション賞、第三十一回大宅壮一ノンフィクション賞を同時受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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