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安部公房とわたし

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  • サイズ B6判/ページ数 253p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062184670
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0095

出版社内容情報

「君は、僕の足もとを照らしてくれる光なんだ―」作家は、夫人と別居して女優との生活を選んだ。没後20年、初めて明かされる手記。「君は、僕の足もとを照らしてくれる光なんだ――」
その作家は、夫人と別居して女優との生活を選んだ。
没後20年、初めて明かされる文豪の「愛と死」。

師であり、伴侶。23歳年上の安部公房と出会ったのは、18歳のときだった。そして1993年1月、ノーベル賞候補の文学者は、女優の自宅で倒れ、還らぬ人となった。二人の愛は、なぜ秘められなければならなかったのか? すべてを明かす手記。

【目次】
プロローグ       
第一章 安部公房との出会い  
第二章 女優と作家      
第三章 女優になるまで    
第四章 安部公房との暮らし  
第五章 癌告知、そして    
第六章 没後の生活      
エピローグ        

【本文より】
 玄関に脱ぎ捨てられた見なれぬ靴と杖。部屋に灯りがついている。寝室に人の気配。そこには暖房を目いっぱい高くして、羽毛布団にくるまった安部公房がいた。去年のクリスマス・イブ以来の再会だった。
「ホテルまで探しにいったのよ」
「こんなに早く、ここへ帰ってこられるとは思わなかった」
「ここまでのタクシー代は持っていたの?」
「ポケットの小銭を渡して、まだ足りなくてゴソゴソやっていたら、運転手、諦めてドアを閉めて行っちゃった」
「マンションの表玄関の暗証番号、よく覚えていたね」
「玄関前でうろうろしていたら、顔見知りの住人が開けてくれた」
 一月の夜の寒空の中、しばらく佇んでいたらしい。
 安部公房が、ぽつりと言った。
「新田くんが結婚させてくれるって」

【目次】
プロローグ       
第一章 安部公房との出会い  
第二章 女優と作家      
第三章 女優になるまで    
第四章 安部公房との暮らし  
第五章 癌告知、そして    
第六章 没後の生活      
エピローグ        
山口果林の芸歴
【本文より】
 玄関に脱ぎ捨てられた見なれぬ靴と杖。部屋に灯りがついている。寝室に人の気配。そこには暖房の温度を目いっぱい高くして、羽毛布団にくるまった安部公房がいた。一九九二年のクリスマス・イブ以来、一ヵ月ぶりの再会だった。(中略)
「ホテルまで探しにいったのよ」
「こんなに早く、ここへ帰ってこられるとは思わなかった」
「ここまでのタクシー代は持っていたの?」
「ポケットの小銭を渡して、まだ足りなくてゴソゴソやっていたら、運転手、諦めてドアを閉めて行っちゃった」
「マンションの表玄関の暗証番号、よく覚えていたね」
「玄関前でうろうろしていたら、顔見知りの住人が開けてくれた」
 一月の夜の寒空の中、しばらく佇んでいたらしい。
 安部公房が、ぽつりと言った。
「新田くんが結婚させてくれるって」


山口 果林[ヤマグチ カリン]
著・文・その他

内容説明

その作家は、夫人と別居して女優との生活を選んだ。没後20年、初めて明かされる文豪の「愛と死」。

目次

第1章 安部公房との出会い
第2章 女優と作家
第3章 女優になるまで
第4章 安部公房との暮らし
第5章 癌告知、そして
第6章 没後の生活

著者等紹介

山口果林[ヤマグチカリン]
女優。1947年、東京都生まれ。桐朋学園大学演劇科を卒業後、俳優座入団。桐朋学園時代より安部公房氏に師事。芸名「果林」は安部氏が名付けた。俳優座、安部公房スタジオを中心とする舞台、『砂の器』ほかの映画、多数のテレビドラマに出演(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あじ

68
二人だけで奏でたメロディーの音符をかき集め、一冊の楽譜にしたような回顧録。鍵盤を鳴らす指はたどたどしく、ぎこちなく。でもイメージだけははっきりくっきりある、そんなぽつりぽつりとしたピアノの音色が静かに沁みる。作家、安部公房。女優、山口果林。肩を並べた年月の暮らしを語り、二人の仕事をなぞる。心穏やかに綴る女の営みを、人生大航海の途上にて。2015/01/20

どんぐり

66
1970年から1993年に安部公房が晩年に癌を患い亡くなるまで共に過ごし愛人関係にあったという、女優・山口果林の告白本である。安部公房という作家がどういう人だったのかは知ることができない。この本で、彼女は安部公房との思い出とともに、過去を精算したかったのかもしれない。いくつかの章で文章の重複がみられるのは、編集のミス。2014/10/26

barabara

63
とにかく日本を代表する作家、と言えば名前が浮かぶ大作家「安部公房」である。その作家も若く才気溢れる美女の魅力には抗えなかったのか…というのが全体的な感想。山口果林という女優の殆どが安部公房から創り出されているのも知らなかったし、安部公房のイメージからは想像もつかぬ茶目っ気たっぷりの時間を浮気相手と過ごしていたのも衝撃だった。少し失望もしたし、やっぱり安部公房と言えども男なんだな…と。奥さんを良くは書いてないが、妻側からしたら当たり前の振る舞いだと思う。⇒続完2013/09/05

harass

62
安部の長年の愛人だった女優による手記。これは生々しい話だ。私的な事柄を語らない作家の貴重な資料。彼女も出演した安部の舞台のことが語られている。観客としてそれらの前衛劇は体験したかったなあ。あと個人的に面白く感じたのは、丸山健二との話だ。滅多に他人の作品を褒めない安部が、丸山の「惑星の泉」に感心して、気持ちを伝えたいと、電話番号を手に入れて、安部がいきなり直電をしたのだという。敬意を持って対応されるものだと思い込んでいたが、「誰ですか、あんた?」といった素っ気ない対応に、安部はすっかり気分を害したのだと。2016/04/16

Gemi

58
友人宅の本棚に並んでいて気になっていたこの本。好きな作家である安部公房。山口果林?とりあえずググってみる。以前は結構テレビに出てた売れっ子女優さんだったようだ。この装丁以外にも写真が載っているのだがなかなかチャーミング。現在は68歳。そんな彼女が実は安部公房の愛人だったことを独白。演劇の世界を知らない私にはちょっと入り込みにくい内容だった。でも本でしか知らなかった安部公房のイメージが少し…いや、あまり変わらなかったか。読まなくても何の損もないが、安部公房ファンにはマストな内容。改めて著作を読みたくなった。2015/10/30

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