出版社内容情報
iPS細胞研究がひらく再生医療は「夢の治療法」なのか。最後の希望を託す人、相次ぐ死亡事例。「光と闇」の両側から真の姿を追う。山中伸弥教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)のノーベル賞受賞によって、ますます脚光を浴びる「再生医療」。それは、幹細胞を使うことで失われた細胞を修復・再生し、これまで治療困難だった病気やけがにも効果が期待できる「夢の治療法」とされている。
現在はまだヒトに対する治療効果は確認されていないにもかかわらず、実は水面下では、すでに「未承認の再生医療」は急速に医療現場に「増殖」しつつある。そのなかには、あやしげなベンチャー企業やコーディネーターらによる「闇ルート」の再生医療もあり、難病に苦しみ最後の頼みとする人々が多数押し寄せている。
しかし、それらの事例がふえるほど、悲劇も起こるようになっている。相次ぐ死亡事故、まったく効果が見られないのに繰り返される高額の幹細胞投与手術・・・そこには、一筋の光明を切実に求める人たちを蚕食しようとする魑魅魍魎たちの姿が透けて見える。見切り発車した再生医療が暴走する危険を、謎のベンチャー企業の本社や、死亡事例の遺族をたずねる韓国現地取材も敢行してあぶりだす。
一方で、再生医療の安全性が証明されるのを待っていられない難病患者がいる。ALS、白血病、脊髄損傷など、ほかに治療の手立てがない人たちにとっては、再生医療は「ダメでもしかたがない」と覚悟のうえですがりつく、最後の希望なのだ。
さらに、再生医療はビジネスとしての利用価値も大いに高まっている。その典型例が、出産時の「臍帯血」を保存して、子どもへの再生医療に役立てようとする「臍帯血バンク」である。すでに難病治療への「福音」としての成果もあげてはいるが、安全性や管理の問題、さらに経営破綻に陥る企業も現れるなど、その見通しは決して明るいものばかりではない。
本書では、バラ色の未来ばかりが喧伝される再生医療の、これら「闇」の部分を克明に描き出し、二面性をもつ怪物「キメラ」にも似た再生医療に私たちはどう向き合えばいいのかを広く問いかける。
坂上 博[サカガミ ヒロシ]
著・文・その他
内容説明
「難病治療」から「若返り」まで、iPS細胞が秘めた「万能」という光と、「万病を治す」と標榜する幹細胞の「幻想」が孕む闇―科学的根拠なく暴走しはじめた「夢の医療」に、私たちは最後の希望を託してもよいのか?俊英医療ジャーナリストが本邦で初めて「再生医療」に斬り込む。
目次
第1章 日韓「闇ルート」
第2章 父はなぜ死んだのか
第3章 「光」を追う人々
第4章 臍帯血を狙え
第5章 死と向き合える力
第6章 中国の胎児細胞
終章 増殖する「闇」
著者等紹介
坂上博[サカガミヒロシ]
1964年新潟県生まれ。県立新潟高校、東京工業大学工学部機械工学科卒業。1987年読売新聞社入社。1998年より医療情報部(現・医療部)記者。医療と社会のかかわりをテーマに幅広い取材活動を展開。おもな取材分野は再生医療、臓器移植、難病、薬害、心臓病、血液疾患(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シュラフ
vonnel_g
takao
yahiro
コブン