フッサール心理学宣言―他者の自明性がひび割れる時代に

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フッサール心理学宣言―他者の自明性がひび割れる時代に

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  • サイズ B6判/ページ数 268p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062178662
  • NDC分類 134.9
  • Cコード C0011

出版社内容情報

「私が私であること」「他者が存在すること」が、ある日突然わからなくなるという独我論体験。その内的構造解明のための新たな心理学

現代は独我論的体験や独我論者への「淘汰圧」が弱まった時代である。
当たり前のこととしてあった「私が私であること」「他者が存在すること」が、ある日突然わからなくなってしまうという眩暈に似た感覚。それは疑われることのない類的存在としての自己の自明性に亀裂が走ることによって引き起こされる。
かなりの人の幼少期に見られるこの体験を正常な発達過程の一階梯と捉え、その内的構造を解明するために、フッサール現象学に基づいた新たな心理学がここに提唱される。もともと現象学はその成立からして心理学への方向性を持っていたのだった。
<フッサール心理学>は、エポケー、現象学的還元という現象学の概念を援用し、自我体験・独我論体験の解明や、それら体験から出発したユニークな芸術家・科学者の世界観の分析のために、フッサールを読んだことがなくとも誰にでも使うことができる技法として作り上げられたものである。

【著者紹介】
京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専攻は心理学・科学基礎論。高知大学、東邦大学教授を歴任。現在明治大学講師。
「夢と睡眠環境の脳波を用いた研究」「自我体験の生涯発達心理学」「心理学の哲学」などを研究テーマとする。

内容説明

フッサールの現象学をあくまでフッサールの言い分に即して忠実に受け取った上で、それを幼少年期に束の間見られる独我論的体験の分析に援用。

目次

第1章 世に棲む独我論者―究極孤絶を生きる人々
第2章 「私はなぜ私なのか」―六歳にして自分を神とする教義を発明した「エミリー」
第3章 日常世界の構造と自明性の裂け目―日本での「私は私だ!」体験調査と木村敏の現象学的精神医学
第4章 ここで念のため、現象学超入門
第5章 フッサール心理学への道―『ブリタニカ草稿』から「事例エミリー」の現象学的分析まで
第6章 ブランケンブルク、自閉症スペクトラム、発達性エポケー
第7章 幼少期に心理的に実在した「フッサール世界」―哲学的フィクションでも精神病理的妄想でもなく
第8章 フッサール世界からの世界観発展―エックルス、稲垣足穂、オウム元信者、シュレーディンガー
第9章 第二の誕生・現象学的反抗・自己事例W・T―人と人との間の世界を現象学はそれ以上遡れない?

著者等紹介

渡辺恒夫[ワタナベツネオ]
1946年生まれ。京都大学文学部で哲学を、同大学院文学研究科で心理学を専攻。博士(学術)。高知大学助教授、東邦大学教授を経て、現在、明治大学専任講師。東邦大学名誉教授。心理学・科学基礎論を専門とし、自我体験、夢、ジェンダー、人間科学論、環境心理学などをテーマとしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

SOHSA

18
《購入本》竹田青嗣、西研からの繋がりで手に取ったフッサール現象学関連の一冊。フッサール心理学とは初めて耳にする言葉だったが、読み進めるうちに著者の取り組みが徐々に理解できるようになり、なかなかに興味深かった。振り返れば私自身も隠れ独我論者ではある。それも幼少期の束の間ではなく寧ろ思春期から成人期にかけて、独我論的体験をし、未だその迷路から脱け出せないでいる。「今、ここ、私」の謎は深い。だからこそフッサールにも惹かれる。とりあえず次は『ブリタニカ草稿』を読みたいのだが、なかなか手に入らない。2015/08/30

坂口衣美(エミ)

3
私が私であるのはなぜ?私以外の人間も私と同じように意識があるのか?…あーややこしい。こういう問いに「まっとうな」大人はたぶん答えられない。「あなたがあなたなのは、とにかくそうだから」とか言ってごまかすだろう。しかし子供はこうした問いを投げ掛ける。それはこの本でいわれる「発達性エポケー」から生まれる疑問なのだ。うーむ、自分にもそういう時期があったのかなあ。あったんだろうなきっと…と言うより、未だに「自分」の意識さえよくわからない。こんなふうに感じるのは自分だけなのか?人とわかりあえるようにはならないのか?な2013/05/22

taro335

3
独我論の事例紹介やフッサール現象学の説明など、前半まではとても面白く夢中で読んだが、心理学へ応用する肝心の後半は、興味本位で読み始めただけの自分ではついていけず。独我論や自我について真剣に考えられる人にはいい本なんだろうな。2013/04/30

おもしろコミカルファニーさん。

1
おもしろかったー! 発達性エポケーっておもしろい表現だな。成長課程の中で行われる自然なエポケーか。病理として独我論的世界に落ちるんじゃなくって、普通に自明性が破れるってのよかった。で、自明性の破れを修復するために、変わった世界観を展開するってことなのかな。ってことは、そうした世界観を持つってことは、生き抜こうとする健康的な心の動きなのかもしれないね。再読する!2023/02/05

YASU

1
独我論や自我,他者,間主観性,現象学的還元等の概念についてはとてもわかりやすく解説されている.心理分析における現象学的方法の有効性もわかる.結論的に述べられている,他者=過去または未来の私であるということもわかるのだが,これを導くためにここまでの論証が必要なものか,難しい.私の理解力不足か.2022/11/09

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