内容説明
視力を失い始めた十四歳の池山潤。同じ症状に苦しみ一年前に死を選んだ兄・昌義が遺した日記から、視力が消えてから見えてくる「時の情景」を知る。そして、滝口雅也。なぜ、兄貴は彼に私を託したのか―。遺伝子と折り合いをつけ、“此の世の理”に抗おうとした少女が綴った、ある夏の日記。小説現代長編新人賞を受賞したデビュー作『地獄番鬼蜘蛛日誌』で、“恐るべき才能”を驚嘆された著者の衝撃第二作。
著者等紹介
斎樹真琴[サイキマコト]
1978年福岡県生まれ。高校時代から創作活動をはじめ駿河台大学法学部法律学科卒業後、会社勤めをしながら小説を書き続ける。2008年『地獄番鬼蜘蛛日誌』で第三回小説現代長編新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんちゃん
6
前作と同じく日記形式で描かれた作品。デビュー作を読んだ時にも思ったが、この作家さんは半端じゃなくすごい。読ませ方が上手いんだ。キャラに魅力があり、興味の引き方も巧みで、あっけなく人を殺す一方で、優しさが溢れている。ユーモアのセンスも中々のものだ。そして、謎が徐々に明かされて全貌が見えた時、読者の予想を裏切るエンディングが待っている。おもしろかったです。2009/04/16
つっきー
5
★★★+ 「地獄番」から期待している作家さん。視力を失う一族というファンタジーっぽさもありながら、しっかり現実と向き合わさせられる内容。潤が意外にもあっけらかんとしているから、視力を失うことへの恐怖はそこまで伝わらなかったけれど、自分の身に起こったらなんて考えたくもない。目の前に映る全ての物を喪うなんて、死んでしまうことと一緒だと思うから。読み終わってしばらく呆然とさせられたのに、今はまたいつか読んでみようって思える作品になった。滝口くん、かっこよすぎるよ。。。2012/10/22
ゆりまなっとう
4
初斉藤真琴さん、眼が見えなくなる病気の14歳の少女が主人公。あまりにたくさんの人が死ぬ。文章から色あふれる情景がきれいだと思った。私的にはそんなにおもしろくなかったかもしれない。2012/04/13
さんた
3
予備知識一切なしで読み始めたのでどうなることかと思ったけど、続きが気になってぐいぐい読めた。実際に「時の情景」を見ることのできない人でもこの物語の登場人物に感情移入できるのは、みんなが「選別と淘汰」の中を生きているからだと思う。14歳っていうか思春期って、ちょうど生きることのしんどさが見えてくる頃で、生きることよりも「死」に魅力を感じたりもするよな。主人公の女の子が馬鹿で、でもすごく可哀想だ。父親との関係とかギクシャクしないはずがない。彼女や周囲の人にこの先幸せが訪れることを祈るばかり。2011/04/14
katta
3
未熟であることは悪いことじゃない。作者が思っていることがすべて伝わるわけじゃないけど、その情熱は伝わる。ある種の宿命を負わされた一族の物語として、別の角度で書いてみて欲しい。2011/01/26