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仮の水

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  • サイズ B6判/ページ数 160p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062148412
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

現代中国の「真」の姿が、はじめて小説になった。
<かれ>は、都市の表層を離れ、中国の奥へ、奥へと向かう――。中国のいちばん深部に、<かれ>は「現代」を見つけたのだ。物質的な世界にさらされた魂の漂泊、それこそが「現代」であり、新しいと。変貌する中国、その深淵にあるアジアの姿を、<かれ>は目と耳、そして自身に流れる血をとおして感じる。日本文学の世界性を代表する作家が、現代中国の「真」の姿を描き出した、本邦初の連作短篇小説集。

内容説明

「仮」と「真」、どちらかわからない世界。表層的な物質世界と大陸深部との摩擦。一人の越境者として、自己の存在を異言語にさらす作家の目が、全身が、描き出した中国。グローバリズムに侵食され、変容する「現代」を日本語で掴み、鮮烈に映し出した、衝撃の短篇集。

著者等紹介

リービ英雄[リービヒデオ]
1950年11月29日、アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー生まれ。外交官の父と共に台湾、香港などに移り住み、一六歳から日本に住む。プリンストン大学東洋学専攻卒業、同大学院博士課程修了。プリンストン大学、スタンフォード大学での日本文学教授職を経て、法政大学国際文化学部教授。西洋出身者としてはじめての日本文学作家。1982年、英訳『万葉集』で全米図書賞を、1992年、『星条旗の聞こえない部屋』で野間文芸新人賞を、2005年、『千々にくだけて』で大佛次郎賞を、2007年、これまでの執筆活動にたいし、国際交流奨励賞を受賞している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

340
幾分か長めの表題作を含めて、4つの短篇を収録。初出はいずれも「群像」。巻頭の「高速公路にて」の黄河大橋から始まって、いずれも中国のやや辺境部の地を巡る。紀行といえばそういえなくもないのだが、作中の人称には"かれ"が選ばれていることからすれば、やはり小説として読むべきだろう。作中の"かれ"は、ほぼ作者その人であろうが、あえて三人称で語ることで客体化を図っているのである。また、紀行にしてはしばしば内省的でもある。その時にキー・コードとなるのは言葉なのだが、それはリービ英雄にあってはアイデンティティのあり方に⇒2022/04/16

かふ

19
『高速公路にて』『仮の水』『老国道』「我是』の4作からなる短編連作。日本語の中に中國表記と英語が交わる文体。越境文学か?『高速公路にて』アウディに乗って黄河大橋を渡る彼と運転手。「道」がテーマか?道教の遺跡を巡ったり。近代化と拝金主義の中國が顧みられる。そんな中で「老外」と呼ばれてしまう彼の心情。殷の遺跡。漢字の元になった甲骨文字。奴隷として人身御供された子供骸骨も。そこに毛沢東語録。「奴隷の残虐さを示す教科書的な一例といえる」。2020/04/21

ちいくま

5
地理的、言語的、時代や生活習慣の隔たり。何層もの世界を行き来する幻想的な感じを味わい楽しむ、という読み方をしてしまったです。ちょっと難しかった…2015/12/07

Marina

3
自分探しの旅に出たはずが、「よそ者扱い」され、ますます道に迷っていく。本物と偽物、真と仮…人生は、知れば知るほど疑問が増えていくのかな。 難解な話だけど、心に残る本でした。2019/11/27

cogi

2
外国語が目から耳から入ってきて、自分の理解できる言語に変換され、また外国語となって発信される、ぐるぐると回るような感覚を覚えた。何気ない描写だけれどそこが一番惹かれる。「かれ」は中国語の方言もよく理解できないし、中国との血縁的な繋がりなども特になく、その地にとっては不安定な存在だが、村の人々が「かれ」を「老外」とよぶだけで、「かれ」の輪郭ははっきりしてくる。言葉というのは不思議、相手を形容することだけでで存在を可視化してしまう。たとえそれが侮蔑的な言葉であっても。2015/03/13

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