内容説明
4年もの間ホテルにひきこもる、他者との肉体的接触を極度に嫌う、相対する人間の“金に対する想い”が様々な幻覚となって現れる―これらはネット上で「金の声を聞く男」と呼ばれ、株式市場の値動きを予見し二百五十億円超の資産を築いた「ヒィ」の「症状」である。その彼のもとに、一枚の旧札が送られてきた。それこそが、捨て子だった「ヒィ」の本名が記された伊藤博文の千円札、失くしてしまった唯一の大事な宝物だった…。送り主は、投資ファンドの代表である沢谷という男。かつて「ヒィ」との仕手戦で屈辱的な大敗を喫していた。描いた絵図を台無しにした仇敵「ヒィ」に対して、巻き返しを図る沢谷は何を!?第39回メフィスト賞受賞作品。
著者等紹介
二郎遊真[ジロウユウシン]
1975年生まれ。東京都出身。在学中に映画シナリオコンクール「城戸賞」にて、2年連続で最終選考に残る。以降、TV局・映画会社より依頼の企画を執筆し、2006年に全国公開映画「着信アリFINAL」にて脚本家デビュー。2007年に「マネーロード」で第39回メフィスト賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こうせいパパ
37
テンポよく進み、わりと読みやすかった。それなりに楽しめたが、もっと株式市場でガンガン戦うのかと思ってたので、若干拍子抜けか。2015/05/20
アツシカ
4
大げさな金融小説かと思いきや、小さな人間の人生の物語だった。千円札語りが良かった。ストーリー上で必須ではないけれど、一歩引いているようでありながら同時に寄り添うようでもある彼(?)の視点が心地良い。でも脇役視点での語りはいらなかったと思う。金テーマなのに雰囲気がとても柔らかくて終盤はずっと落ち着いて読めた。しょうもない人の欲とかが人間の全てではないし、いろんな人がいて当たり前だよね2018/03/25
人間万事塞翁が馬ZAWAZAWA
3
視点の変化が面白かった。あえて神の視点を使わず、節ごとに視点を変えた。好きですね私は。2011/11/05
sta_kishimoto
2
内容知らずにタイトル借りした作品。 株式市場を相手にした経済小説よりのお話かとおもいきや。。。 なんか何も起こらずお話が収縮していったかな。 お金が一人称の語り手としてでてきたり、人それぞれの主人公への見方がお金を通じての幻覚としてでてきたり、微妙にそそられるところはあったものの、なんだそれって感じで終わっちゃった。 メフィスト賞ってなんなんだろ? まぁそんなこともあるよね。 2012/05/15
UPMR
1
メフィスト賞の中でもマイナーな作品なのであまり期待しないで読み始めたがとても面白かった。仕手戦の決着は呆気なく、そういう経済小説的な要素を期待すると肩透かしだとは思うけど、金にとらわれた人間の原点を巡る物語としては、シンプルでテンポの良いロードノベル風のプロットのなかで、自ら葬り去ったはずの人間性に揺れ動く主人公の姿が非常に読ませる。終わり方もいい。2024/08/26