内容説明
冥府の淵に咲く花“あやめ”。その甘い馥りが妖しく誘う。腐敗していく“鰈”の重さ。酩酊と覚醒のレールを地下鉄は走る。白い肉の深部の“ひかがみ”。その魔がすべてを食らい尽くす。生と死の間に存在する恍惚のエロス。その果てのない闇に迷いこみ、帰途を絶たれた三人の男。
著者等紹介
松浦寿輝[マツウラヒサキ]
1954年東京生まれ。東京大学教授(表象文化論・フランス文学)。詩人・小説家。2000年『花腐し』で第123回芥川賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Porco
18
現実と幻想のあいまを漂うような短編3つ。あとがきによるとラカンの理論を意識しているみたいです。こういう精神分析みたいなものは映像のほうが相性がいいのではないかと思うのですが、文章で見事に表現しているのは、さすが松浦先生。2017/01/26
なつのふね
9
はじめて松浦寿輝の本を読んだ。3つの短編からなりたっている。人生にもはや 価値を見出だせなくなった中年男が 現実か夢かわからない空間を右往左往する話。暗く グロテスクな展開なのに 言葉の使い方がすごく明晰で リアルに感じられ、巧い作家だなと思う。だが、この小説のグロテスク度合は かなりのもの。気落ちしている時には読まないほうがいいかもしれない。東京というモンスター都市と 人生の行き場のない男の話だが、表紙や挿絵や装幀が 暗く、美しく 本の凄味を際立たせている。2018/07/01
skellig@topsy-turvy
6
生と死、現と夢の狭間にずぶずぶと導かれる3人の男。どこかに淡い光がありそうだけど闇夜、固い地面かと思いきや沼、全て幻想の渦かと思うものの圧倒的存在感を持つ生物と出来事。最後の「ひかがみ」には蛇が登場するけど、蛇は「あやめ」と呼ばれることもあるとされ最初の物語に繋がる。思えばこの本自体蛇かもしれない。どことなくぬめって翳っていて、そして何故か優美。2012/10/09
純文
2
なんといっても1作目の「あやめ」が凄かった。この著者は一回死んで、向こうで人生を俯瞰して核心を掴んでから生き返ってこれを書いたんじゃないか。2作目の「鰈」、怖かった。少し角度が違えばホラー映画の怖さになるのに、そんな映像的な怖さの遥か先というか手間というかにあるとにかく避け難い人生的怖さだ。いやこんな表現が安く思える。読まないとわからない。読んだのに表現できない。それが小説か。3作目「ひかがみ」はこれ単体であればそうではなかったはずなのに前2作の後ではやや落ちてしまうこれは錯覚なのか。それほど各々が濃い。2017/05/12
shimo775
1
わずかに登場人物の絡み合った三本の連作。全編において夢遊病者のようなふわふわした非現実感とともに場面が進んでいく。昏く黒く粘り気があって、温くて甘い、そんな雰囲気に浸れることだろう。2010/11/30
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