内容説明
辛辣なユーモアと深い愛をこめて小説、映画、日常の細部を語る過激な豊かさと魅惑にみちた金井美恵子の世界へようこそ。最新エッセイ集。
目次
タバコ・ロード、マイ・ウェイ
ミシシッピ河の流れのように
お寺関係あれこれ
猫に話しかけないでください
猫と母親
「お金」については語らない
書くことのない作家は「猫」以外に何で「しのぐ」か
疲れが溜まる
発見の場として
「結果」が出なかった?〔ほか〕
著者等紹介
金井美恵子[カナイミエコ]
1947年高崎市生れ。群馬県立高崎女子高校卒業。67年「愛の生活」が太宰治賞候補作となる。同年、現代詩手帖賞受賞。79年、「プラトン的恋愛」で泉鏡花文学賞受賞。88年、「タマや」で女流文学賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
13
何によって涙はあふれるのか。〈バラ色の光芒を浴び泡立ち弾ける乱舞の回転する肉体とレースの渦のなかに〉〈めくるめく急速度で回転しながら、晴れやかな微笑と胸のうずく痛みと共に、はっきりと見えてくる〉記憶に圧倒されること、自らとその体験との間には数十年間と言う時間があって、けれどそうではなくて、そう言った個人的な時間に対する感慨が重要なのではなくて、〈ただ、ジャン・ルノワールの映画を見るという体験が、最も重要なのであり、だから、涙はあふれる〉のだと書く、金井美恵子と言う作家のモラルが、自分はいつだって好きだ。2021/09/03
あ げ こ
11
噴き出して、クスクス、ゲラゲラと笑ったり、うっとり、身悶えしたいのを堪えて、ため息を吐いたり、めまいと、喜びと、戸惑いと、込み上げてくる叫びを飲み込んだまま、その手強さに酔い痴れて、とてもとても快く幸福な心地で、楽しむ。魅惑に満ちている。刺激に満ちている。恐るべき豊かさ。恐るべき細やかさ、緻密さ。その繋がり、連なりの強靭である事、滑らかである事。辛辣で、もっともで、この上なく的確で。それ故に読めば鮮烈に感じる。どれだけ美しいか。どれだけ甘美であるか。どれだけ陳腐で、退屈で、くだらないか。強く強く思い知る。2018/06/11
青豆
11
小説、映画、日常の細部を辛辣なユーモアと深い愛を込めて語るエッセイ集。映画監督の青山真治の小説家としての第1作『ユリイカ』の文庫版に寄せた解説と同じ「競争相手は馬鹿ばかり」の世界へようこそ』と、文学界を揶揄するタイトル。文壇や作家達を一刀の元に斬り捨てる。ワタシの好きな島田雅彦も金井美恵子の前では只の青二才。「作家の値うち」で金井美恵子をこき下ろした福田和也を鼻にもかけない。過激な豊かさと魅惑にみちた金井美恵子の世界。やはり金井美恵子は素晴らしい2015/01/20
SY
0
小説家の中で感受性と表現力、聡明さは当代随一だろう。他の小説家の多くを「競争相手は馬鹿ばかり」と言って良いのは確かにこの人だけ。高橋源一郎が確か「日本の作家で「描写」をして良いのは金井美恵子さんだけです」と言っていたのを思い出す。あるいは、盟友の蓮實重彦が書き、取り巻きたちが絶賛した中編小説を「誉めるところを見つけるのが難しい」と切って捨てもする。文壇のドンだった丸谷才一なども「反動」の一言で片付けたっけ(笑)読んで胸がすく批評集。彼女の小説は、どれもみな「目が喜ぶ」ものばかりだ。2016/11/20
ふじこ
0
美しい、毒舌。2016/02/05