内容説明
北の街の小さな居酒屋「ちぎり屋」では、今日もまた、わけあり者たちが、心に溜めた想いを語っていく。繁栄にわく小樽の街の片隅にあるおもんの店で、一杯の酒とともに語られる「問わず語り」。
著者等紹介
蜂谷涼[ハチヤリョウ]
1961年、小樽市生まれ。小樽商科大学短期大学部卒。シナリオ講座で学んだ後、1990年「銀の針」で第11回読売ヒューマン・ドキュメンタリー大賞カネボウスペシャル佳作受賞。1994年、「分別回収」で文学界新人賞候補に、また1996年、「煌浪の岸」で小説新潮長編新人賞候補となる
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感想・レビュー
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じいじ
98
しみじみと面白い小説を読んだ満足感に浸りました。一度も訪れたことのない北国小樽の街や居酒屋「ちぎり屋」の情景を、勝手に思いめぐらしながら読み終えました。主人公は、亡き夫と立ち上げた「ちぎり屋」を一人で切り盛りする36歳のおもん。私は、蜂谷さんの作品に登場する人物の描写が男女とも好きです。とくに女性たちは、粋で気っ風の良さに魅かれます。おもんは、ひかえめな仕草に色香が漂います。「ちぎり屋」に集う一癖も、二癖もある人たちを8つの連作短篇で綴った本作は、また一人静かに読み返したくなる秀作です。2021/03/10
タイ子
89
読友さんたちの評判通り素敵な作品だった。小樽の小路裏にある小体な飲み屋。女店主の名はおもん。東京から老舗跡取息子と駆け落ちをして小樽に来て数年後、亭主は病で他界。寂しさを胸に一人続ける店に訪れる様々な男と女たち。物語は短編ながら時代とともに変わりゆく小樽の町とそこに暮らす人々の人生を流れるように描いて途中でため息さえ漏れる。大家の近江屋が語る過去の話が印象的。脇役で登場する猫たちの存在もいい。生きる場所を定めた女は強くなる、それを見守る男たちの眼差しが温かい。好きだなぁ、こういう作品。2021/11/09
ぶんこ
48
「煌浪の岸」を先に読んでいて、同じ明治から大正にかけての小樽が舞台なので、より楽しめました。おもんさんが寂しさを抱えて歩いた街で、わかさんとすれ違っていたかもしれない。老舗呉服商の九代目と駆け落ちしたおもん。小樽まで流れ着いて小さな居酒屋を開きますが、僅か3年で善蔵さんは病死。それからの長い月日、一人で「ちぎり屋」を守りつつ、独り身の寂しさがふつふつと読んでいる私にも漂ってきて切なかったです。近江屋さん、萬龍さん、蝶朴さん、親方たちの寂しさも伝わってきて、ふと家族に先立たれたらと思うと怖くなりました。2021/04/07
KEI
39
読友さんのレビューで知って。8編の連作短編。江戸に古くからある老舗の柏屋九代目善三と小樽まで駆け落ちをして来たおもんは善蔵亡き後も「ちぎり屋」を営んでいた。そこに集う萬龍や大工の親方、幇間の蝶朴、近江屋の人々の交流が温かく読んでいて心地よい。善蔵を偲びつつ、揺れる女心も見事に描かれていた。明治から大正にかけて小樽の繁栄の中でひっそりと営む「ちぎり屋」の風情が四季の中で引き立っていた。レビューが少ない作家さんだが、多くの方に読んで頂きたい作品です。2021/12/05
青いうさぎ号
29
明治末頃から大正期の小樽。小路の奥にある小体な居酒屋「ちぎり屋」が舞台の短編8話。女将・おもんの身の上から始まり、常連客たちの人生が見える。客達の会話やおもんの視点から、往時の小樽の活気、戦争に左右される様子が語られる。それぞれの過去を抱えた男達の姿に、小樽一の芸妓・萬龍の艶やかさが花を添える。一編一編がぎゅっと濃縮されたような深い味がある。藤沢周平や池波正太郎などが好きな人には絶対オススメ。面白かった!2002年第一刷。19年経ってこの本に出会えた。(Special thanks for じいじ様)2021/01/07




