感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
トンボ玉
18
デニス・キーン(1934~2007)は30数年日本に在留して大学で教鞭をとり、丸谷才一「たった一人の反乱」などを翻訳していますから、日本文学に対するレッスンの感じで読み始めました。 しかし驚いたのは近代の日本文学に対してはほぼ全否定ですね。精々評価は夏目漱石や永井荷風ぐらいです。「一年に一冊の注文、丸谷才一作品」「三好達治の感傷は歯磨き粉」などなど目次を書いてもその罵倒振りは分かると思います。でもそこには日本への愛情感じました。日本の近代化が文学においては伝統・古典を捨て去ったことへの怒りですから。2014/07/18
間違いちゃん
0
明治以降の日本文学は、西洋化を目指してそれ以前の伝統・価値を破壊してきた。そして、このことが現在の精神的「砂漠化」につながっている。本書はこの過程を、言文一致・モダニズム・私小説(告白という形式)・心境小説といった明治以降の文壇の潮流をたどることで明らかにしていく。 実学の極端な重視はやめて、日本人は明治以前の伝統的な価値を今こそ見直すべきとの主張は、就職やその先のキャリアといった将来ばかりを気にする現在の私自身を痛烈に批判しているようで、考えさせられた。2012/11/10