仮の約束

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仮の約束

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  • サイズ B6判/ページ数 259p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062070331
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

じいじ

89
2編は女の不貞の話。ドロドロした展開なのに、嫌悪感を抱かずに読めるのは筆者の文章力によるのだろうと思う。私は断然、元看護婦の主婦・末子を主人公にした【仮の約束】が良かった。末期癌で再入院の50男を、ボランティアで介護することになった末子との、成就することのない淡いオトナの恋心を綴った物語。病室から帰っていく、彼女の後姿を見るのが日ごとに辛くなる。淋しい気持ちに苛まれる患者の胸中が察せられる。ついに告げられる「結婚したかったなぁ」のひと言。夫との確執、嫁姑の関係…など諸々を考えさせられる奥深い小説です。2020/09/26

竹園和明

41
水のようにサラサラした質感、主張しない文体、無音の余韻、しかし本作は紛れもない名作だ。末期癌の患者をボランティアで介護する主婦末子が出逢った、高木という男への淡く儚い恋慕を描く表題作が群を抜く仕上り。限られた命を前に、前のめりになれない彼女の切ない想いを絶妙な空気感で描く。高木の仕草や翳り、目線や笑顔に、末子が徐々に惹かれて行く様子とか、お互いに口には出さない想いが交錯する様子が美しい。強烈なインパクトで印象を残すより、こういう手法で余韻を残す方が数倍難しかろう。芥川賞候補6回。多田尋子はかなり凄い。2020/05/18

ぶんこ

40
表題作以外は不倫の男女の話で苦手な系統なのですが、多田さんの作品は淡々としているからでしょうか、スッと読み切っていて驚きます。最後の表題作は、末期癌で身内の居ない高木さんをボランティアで介護する末子さんとの心の結婚?が切なくて素敵でした。夫のないがしろにされ、姑の介護をしてきた末子さん。高木さんと出会えたことが自分のことのように嬉しいのです。なんだか不思議です。どうして読後感が良いのか?2019/10/09

Kumiko

36
女として生きてきたならきっと、痛いほど解ってしまう心の動きや深い感情。男の人を好きになる理由は人智を超えて、例えば優しく細めて笑う目を見てただ「好きだ」と思うこと、沢山話をしたいと思うこと、そんな衝動を小説にしたらできた、とでもいうような三篇の短編集。どの話も不倫や不貞が絡んでくるが、不倫即ち不幸な結末、というパターン化された描き方でもなく、深い余韻を残す。私が今までの恋愛で経験した辛い事も苦しい事も、この本を理解する為だとすれば報われると思いたい。「ほぅ…」と溜息をつき、その後ぽとりと落涙、そんな読後。2020/01/03

なっく

30
芥川賞最多落選記録者である多田尋子の約25年前の作品。そう思って読むせいか、秀逸なのだが何か足りないような気もして、かえってそれがいい。時代設定が少し古いので、男性がやたら強引で威張っていたり、女性の言葉がとても丁寧だったりと今との違いはあるが、やってることは一緒。女性は不貞に走る。しかもその行為そのものの描写は一切なく、言葉、仕草、表情から読者は感情の揺れを想像するしかない。もちろんそこに葛藤はあるようだが、ドロドロとはしていない。最後の表題作は清々しさすら感じる。これは男にとってのホラーかもしれない。2020/07/29

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