内容説明
雪深い新潟山平村から秩父、浅草、安倍川、天川原、市谷富久町そして葛飾白鳥まで。何も語らずに逝った母の人生をたどる旅。母への哀惜を綴る長篇小説。
感想・レビュー
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ヴェネツィア
333
画家・版画家・装丁家の司修の小説。晩年の病んだ母に向き合うことから、彼女の人生を辿り直すことになる。司は幼少時には私生児として、母を恨みもしたし、彼女自身の生には関心を払っては来なかった。彼女は浅草の生まれであると称していたが、実は新潟県東頚城郡山平村で生まれ育っていた。「私」がこれまで信じていたのは彼女の造り上げた虚構の人生であった。また、作中では鈴木牧之の『北越雪譜』や谷崎の『鮫人』が引用されるが、それらはこの小説にイメージのさらなる増幅を生じさせ、一層に無限と伝承の物語の中に再生するかの如くである。2022/09/30
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