内容説明
不治の病いに苦しむ夫の薬代のため殺人を犯す高橋お伝、愛しい男を追い、罪人となって流刑地に赴く妲妃のお百、男の裏切りに死で報いた新橋芸者、花井お梅―。江都を賑せ伝説となった稀代の悪女・毒婦たちを、プロレタリア作家として壮絶な境涯を追いつづけた著者が視点をかえ、純粋な愛をつらぬき時代に翻弄された悲劇の主人公として、その生と性を描ききった意欲作三篇。
著者等紹介
平林たい子[ヒラバヤシタイコ]
1905・10・3~1972・2・17。小説家。長野県諏訪に生まれる。諏訪高等女学校を卒業。幼少より読書に親しみゾラの翻訳者、堺利彦に手紙を送るなど社会主義への関心を深める。卒業後上京し山本虎三と出会い大連に渡るが女児を生後16日でなくして帰国。これをもとに「施療室にて」を発表、高く評価されるプロレタリア作家として出発する。戦後は「こういう女」で第1回女流文学者賞受賞。1953年に社会主義作家クラブを結成、文筆活動とともに社会活動に奔走する。72年、芸術院恩賜賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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けろ
2
goo辞書によると毒婦とは「人をだましたりおとしいれたりする無慈悲で性根の悪い女」とあるが、「高橋お伝」は無慈悲どころか浪之助に強すぎる憐みの情をもちそれで犯罪を起こしている。今なら共依存で分類されるように思う。2023/03/06
wei xian tiang
2
三作とも素晴らしい。ドロドロと成り行きで堕ちて行く女達を鋭利な文体で描く中に、はっとさせられる不思議な心理の動きが垣間見せられる。「高橋お伝」はハンセン病を小道具にした作品で夢中で読んでしまった。2017/10/05
はささ
0
★42010/01/09
ks3265
0
この本を読むまで著者は知らなかった。同時代の女性作家は有名であるのに。毒婦3人のうち、高橋お伝は名前を聞いたことはあったが、どういう犯罪を犯したのかは知らなかった。三人ともなまじ綺麗で男にもてたがために男で身を滅ぼしたのだろう。馬鹿な女ともいえるが、一途とも言えるかもしれない。たかだか18才のお百の行動力はすさまじい。2019/01/27