講談社文芸文庫<br> 石原吉郎詩文集

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講談社文芸文庫
石原吉郎詩文集

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  • サイズ 文庫判/ページ数 307p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061984097
  • NDC分類 911.56
  • Cコード C0192

出版社内容情報

憎むとは待つことだ
きりきりと音のするまで
待ちつくすことだ

詩とは「書くまい」とする衝動であり、詩の言葉は、沈黙を語るための言葉、沈黙するための言葉である――敗戦後、8年におよぶ苛酷な労働と飢餓のソ連徒刑体験は、被害者意識や告発をも超克した<沈黙の詩学>をもたらし、失語の一歩手前で踏みとどまろうとする意志は、思索的で静謐な詩の世界に強度を与えた。この単独者の稀有なる魂の軌跡を、詩、批評、ノートの三部構成でたどる。

石原吉郎
海が見たい、と私は切実に思った。私には、わたるべき海があった。そして、その海の最初の渚と私を、三千キロにわたる草原(ステップ)と凍土(ツンドラ)がへだてていた。望郷の想いをその渚へ、私は限らざるをえなかった。(中略)1949年夏カラガンダの刑務所で、号泣に近い思慕を海にかけたとき、海は私にとって、実在する最後の空間であり、その空間が石に変貌したとき、私は石に変貌せざるをえなかったのである。(中略)望郷のあてどをうしなったとき、陸は一挙に遠のき、海のみがその行手に残った。海であることにおいて、それはほとんどひとつの倫理となったのである。――<本文「望郷と海」より>

石原 吉郎[イシハラ ヨシロウ]
著・文・その他

佐々木 幹郎[ササキ ミキロウ]
解説

内容説明

詩とは「書くまい」とする衝動であり、詩の言葉は、沈黙を語るための言葉、沈黙するための言葉である―敗戦後、八年におよぶ苛酷な労働と飢餓のソ連徒刑体験は、被害者意識や告発をも超克した「沈黙の詩学」をもたらし、失語の一歩手前で踏みとどまろうとする意志は、思索的で静謐な詩の世界に強度を与えた。この単独者の稀有なる魂の軌跡を、詩、批評、ノートの三部構成でたどる。

目次

詩の定義
詩集「サンチョ・パンサの帰郷」より
詩集「いちまいの上衣のうた」より
詩集「斧の思想」より
詩集「水準原点」より
詩集「礼節」より
詩集「北条」より
詩集「足利」より
詩集「満月をしも」より
ある「共生」の経験から
ペシミストの勇気について
望郷と海
失語と沈黙のあいだ
棒をのんだ話
一九五六年から一九五八年までのノートから
一九五九年から一九六二年までのノートから
一九六三年以後のノートから

著者等紹介

石原吉郎[イシハラヨシロウ]
1915・11・11~77・11・14。詩人。静岡県生まれ。東京外語卒。1939年、応召。翌年、北方情報要員として露語教育隊へ分遣。41年、関東軍のハルビン特務機関へ配属。敗戦後、ソ連の収容所に。49年2月、反ソ・スパイ行為の罪で、重労働25年の判決。スターリン死去後の特赦で、53年12月、帰国。54年、「文章倶楽部」に詩を投稿し、詩作を開始。翌年、詩誌「ロシナンテ」を創刊
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感想・レビュー

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フム

28
ーー同じ本を何冊も持っているのに、今すぐに石原吉郎の言葉が必要になって、近くの書店でこの本を買った。そんなSNSでのつぶやきを見かけてから、この本のことが気になっていた。詩を読み、随筆を読み、後半はシベリヤ抑留から帰還した数年後にノートに書き綴ったという文章を読んだ。こんなにも深い、内省に沈んだ文章を書く人がいるのだという驚きがあった。シベリヤでの強制収容所の壮絶な体験は詩人から言葉を奪った。2020/10/04

みねたか

15
詩,評論,創作ノートの三部構成。詩は力強く言葉に緊張感がみなぎる。事物が描かれる中の不気味な迫力。安易な共感を拒むように不意に突き付けられる感情。第二部シベリア抑留時の体験による評論。生々しい体験談もあるが,絶望的な状況下で人間性を喪失していく過程,帰国後の激しい痛みを伴う回復の過程が描かれ,感想を書き表す言葉もないほどの衝撃を受けた。第三部創作ノートでは,帰国後自らに向き合い,詩作に向かう日々の想念が綴られる。一文一文が思想であり,詩だ。図書館本。これは買いだ。2016/12/06

しゅん

11
詩よりも散文に惹かれる。特に「ある〈共生〉の経験から」と「ペシミストの勇気について」は、シベリヤ抑留の経験から見出された裸形の人間そのもの(としか今の僕にはいいようがない)を紙に叩きつけるような言葉に揺れ動かされるものがある。この経験が生に繋がらない、むしろそのまま死へと導かれるような性質を帯びているように思えて、揺れは長引く。2020/04/30

踊る猫

11
辺見庸氏の著作で紹介されているのを読んで関心を抱いて挑んでみた。詩を味わう感性を私は丸っきり持っていないので、詩作の出来栄えについてはなんとも言い難い。私の興味は散文とノートに向かってしまった。パウル・ツェランやフランツ・カフカやシモーヌ・ヴェイユに通じる……というと過褒だろうか。ギリギリまで言葉を削ったストイックさと強靭な思索に言葉を失ってしまった。自省の念もここまで深まれば自分を追い詰めるしかなくなるだろう、と。ふと二階堂奥歯氏のことが頭をよぎった。彼女はこの恐ろしい詩人の作品を読んだことがあるかな?2016/07/02

なっぢ@断捨離実行中

7
「人間はつねに加害者のなかから生まれる」この一言だけでも読む価値があった。極限的思考に言葉を奪われる体験。2017/04/17

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