講談社文芸文庫
怒りの子

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  • サイズ 文庫判/ページ数 299p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061983748
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

自分を掴もうとして空転を重ねる美央子。そんな美央子を姉のように見詰める、超然とした初子。美央子と同じアパートに住み、常に彼女にまつわりつく、虚言癖を持つますみ。三人の女性の緊迫した心理の劇は、美央子の松男への強引な思い入れを契機に、破局へと突き進む。昭和五十年代後半の京都の町家を舞台に、周密な言葉運びと夢の持つ暗示力で、人間の内面の混濁の諸相を描破した、読売文学賞受賞作。

著者等紹介

高橋たか子[タカハシタカコ]
1932年(昭和7年)生まれ。1954年(昭和29年)京都大学文学部仏文学科卒業。高橋和巳と結婚。1956年(昭和31年)京都大学大学院に入学。1958年修士課程修了。1973年(昭和48年)3月、長篇『空の果てまで』が第十三回田村俊子賞受賞。1976年(昭和51年)11月、長篇『誘惑者』が第四回泉鏡花賞受賞。1977年(昭和52年)10月、連作長篇『ロンリー・ウーマン』が第十六回女流文学賞受賞。1985年(昭和60年)4月「恋う」が第十二回川端康成文学賞受賞。1986年(昭和61年)2月、長篇『怒りの子』が第三十七回読売文学賞受賞。2004年(平成16年)1月、長篇『きれいな人』が第四十五回毎日芸術賞受賞
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感想・レビュー

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ちぇけら

24
ゆめのげんじつのような質感が肌のうちで反芻している。窓をあけるといちめんの雪で、あーーーって声をあげても音は吸いこまれていく。肉が裂けそうなほど思っているのにあなたは気づかない。溢れそう、流れそう、なくなりそう、並べても、いまのわたしにぴったりな言葉はなくて、とほうもない。心臓が敏感になって鈍くなって、あなたの視線の先をたどる。2文字の感情。わたしはわたしの穴に落下していく。なにがわたしを規定してくれるのだろう。どこにわたしの枠があるのだろう。わたし、巨きなうねりに呑まれてしまう。巨きな、怒りのうねりに。2019/09/20

青豆

6
自分の生きる意味や為すべき事が分からず流されて生きる主人公の美央子。そんな「はっきりしない」美央子と周囲の人々との関係が京都弁で描かれており、京都弁の真意を隠した言葉、厭らしさ、陰湿さが、真綿で首を締める様な苦しみを巧く表現している。特に主人公と主人公にまとわりつく虚言癖の女性との会話から見える敵意と嫌悪は京都弁ならではのもので読んでいて気分が悪くなった。2014/04/11

amanon

2
八十年代半ばという時代設定の割には、どことなく前時代的な雰囲気が漂っているなど、幾つかの難はあるが、それでも独特の濃密な文体に引き込まれて読み進めることに。ある領域においては鋭い感性を持ちながらも、優柔不断で方向の定まらない主人公美央子の言動、その美央子の性格を見抜き、美央子を弄ぶかのように近づいてくるますみ、美央子に愛されているのに無自覚でありながらも、時折好意的な行動に出る松男…大凡感情移入できる登場人物は皆無でありながらも、そこで描かれるいわばサタニスティックな人間模様から目が離せなかった。2013/01/03

空の落下地点。

1
概ね全ての十代にお薦め、結末に流されてはいけないことを除いて。オチはキリスト教への誘い。この結末、怒りの子を鎮めるには入信しかないと言ってる。それ以前はずっと“ありのまま”を推奨してきただけに、結末になって選択を強要するのが嫌。怒りの子を鎮める方法が入信しかないわけじゃない。通うべきだったのは初子のもとや教会でなく、病院だった。ありのままとは人生の選択の自由であって、本能や衝動を剥き出しにしてよいということではない。他人に迷惑をかけないのは人間の義務であるが、それを全うするのには入信しかないわけではない。2021/05/07

isbm

1
★★★2021/03/20

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