内容説明
娘の自立していく姿に思い悩む、旧制高校同窓の男達の友情を追った表題作「彼岸花」、女主人の嘘が許せず自らの片腕を切り落とす「銀二郎の片腕」、上官の夫人を伴った戦地からの引揚げの悲惨な旅の中で育つ奇妙な愛情を描く「みごとな醜聞」等、初期から戦後作まで八篇を精選。巧みな会話運びで人情の機微をとらえ、「名人芸」と声価の高い、人間観察の妙趣を味わう名作集。
著者等紹介
里見〓[サトミトン]
1888年(明治21年)7月14日、有島武・幸(幸子)の四男として生まれる。1909年(明治42年)東京帝国大学文科英文科に入学するも、やがて退学。1940年(昭和15年)3月、菊池寛賞を受ける。1947年(昭和22年)芸術院会員となる。1956年(昭和31年)『恋ごころ』、読売文学賞となる。1971年(昭和46年)『五代の民』読売文学賞となる。1983年(昭和58年)1月21日死去
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感想・レビュー
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月
7
★★★★☆(白樺派。有島武郎、生馬の弟。題材への切り込み角度がとても面白い。いわゆる内面からの心理描写だが普通の切り口とは違う。個人的には表題作2作よりも他の作品の方に心を揺り動かされる。「河豚」「俄あれ」「銀次郎の片腕」「鶴亀」「みごとな醜聞」がいい。又、後の解説での「椿」に対する宇野浩二の評論も面白い。本書には8篇の短篇が収録されているが、どれも題名の付け方がシンプルかつとても的確に表現されている。犀星の随筆で、里見弴が紹介されていたので今回初めて手に取るも、その文章には独得の味わいが確かにある。)2013/10/08
amanon
5
これまで著者の名前だけは何となし知っていたが、完全にスルーしていた。しかし、小津映画の原作である『彼岸花』が気になり手に取ることに…何というか色々な意味で「こんな小説を書く人だったんだ」と驚かされることに。とにかく端正な文体が印象的。また会話文に独特の躍動感を湛えており、そこが魅力になっている。個人的には年上の女性との微妙な関係性を描いた「みごとな醜聞」と「初舞台」がとりわけ印象的だったか。お目当ての「彼岸花」はつい映画版と比べてしまいがちだが、これはこれで味わい深い。文子の顛末にはかなり驚かされた。2022/10/26
hirayama46
3
はじめての里見弴。何も知らずに読んだので、小津安二郎との関わりも解説で知りました。監督作品2作くらいしか見たことないけれど……。作品としては収録時期がまちまちなこともあり、若いころは実験的な部分が強かったり、歳を重ねるとぐっと滋味を増してきたりとが一冊で味わえるのが良いですね。しかし、「鶴亀」は本当に読んでいて展開がワープしたかのようでびっくりしました。2022/08/31
駄目男
2
大正期から戦後にかけての短編8作。読むきっかけとなったのは小津安二郎が大陸に出征中に読んでとりこになったという「鶴亀」という短編と小津映画の原作となった「彼岸花」を読みたくて散々、古本屋で探しまわってやっと手に入れたものだったが、どうも私は里見さんの長編物は好きなのだが短編はイマイチ感動が薄かった。 言葉使い、言い回しも馴染みのないものが多く、理解度が足りないのは私のせい。 しかし今日、文化勲章を貰うほどの作家でありながら読まれなくなってしまった原因は、そのストーリーの古さ故かも知れないとも思った。2015/09/10
eazy
2
「彼岸花」が楽しい。確かに小津映画だ。2015/07/22
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- 和書
- 白石公子詩集 現代詩文庫