内容説明
深更、濃霧の中を彷徨って帰宅した三輪与志に、瀕死の兄高志が語り始める。自ら唱える“窮極の革命”理論に端を発した、密告者のリンチ事件と恋人の心中、さらに“窮極の秘密を打ち明ける夢魔”との対決。弟の与志はじっと聴きいる。外は深い、怖ろしいほどの濃闇と静寂。兄の告白は、弟の渇し求める“虚体”とどう関わるのか。『死霊』第一の山場五章を中心に四章六章を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
58
学校の課題図書。相変わらず難しいことを難しいまま書いている。自分の理解度が試されている感じ。Ⅲ巻へ。2017/03/20
藤月はな(灯れ松明の火)
55
再読。純粋な赤ん坊の泣く事の意義。それを大人の都合で泣き止ませようとする事は純粋な存在を否定することではないのか。思想を持ちながらも革命家になれない事を悟っていた三輪高志は革命が社会的に実現し、持続する事の困難さを悟っていたのか。それとも酸っぱい葡萄のように思っていたのだろうか。更に今巻で三輪家に喰い込もうとする首猛夫の生い立ちが分かってくる。もし、その推論が本当なら立ち位置はスメルジャコフ的だ。それにしても実存を巡る男たちの益体も結論もない弁論に憤慨しつつも相手にする津田夫人のバイタリティの凄さよ。2024/08/13
ころこ
42
カント『純粋理性批判』に無限判断という言葉が出てくる。無限判断とは、存在そのものを一旦否定する(存在を神に預ける)ことによって、否定性が逆説的に更に強い肯定性を獲得することだ。虚体について「-その耐えがたさはどのくらいなのだろうか。-無限大といっても好い…」と第1巻の第3章にある。本巻では第5章で超越性へと無限について、革命とその行動中に起こった『悪霊』を思わせる仲間割れのような描写、『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」のような対話形式の宇宙論とも言いようのない無限と存在についての思弁が続く。この2つの章2024/10/05
Ayumi Katayama
21
読み終えたがずいぶん時間がかかったのではじめの方の印象がすでに薄い。千億光年ほど離れているところからやってきた兄ちゃんと高志兄さんの話はほぼ理解不可能。ただ一つ、「存在の三つの永劫の秘密」に「終わりから始められぬ」という話があって、それを聞いて「円周率を終わりから読んで無限(もしくは無限でないこと)を証明しようとする話」を、ふと、思い出した(  ̄- ̄)。あとはやっぱり津田夫人がだんだん好きになる。2022/01/26
chanvesa
21
「考えに考えてさらになお考えつづけてまだとうてい考えつくせぬことがあるから、ついに自殺できないのです。(141~2頁)」という与志の言葉は印象的。その状況における理性の役割や葛藤はどうなんだろうか。高志の「自分自身」に関する考究(232頁~)は、「革命」理論に「すり替えられていく」が、与志は内面に追及されていく。しかしここでもまだ議論は感覚的(不快といった感覚)であるが、だからこそ文学というフィールドに立脚しているのだろうか?偉大なる妄想。2015/01/11