内容説明
ベンヤミンは本書の文章の組み立て方をモザイク画にたとえた。描き出された事象は二十世紀という夜を背景に浮かびあがった星座さながらである。星は暗くなければ目に見えない。本書の対象であるドイツのバロック時代もまた夜であった。ベンヤミンは暗がりの中に埋もれた未完結な現象を、さらに深い闇から観察することによって、二十世紀の根源的な意味を明るみに出す。
目次
認識批判的序論(トラクタートの概念;認識と真理;哲学的な美 ほか)
悲哀劇と古代悲劇(バロックの悲劇理論;重要ではないアリストテレスの影響;悲哀劇の内実としての歴史 ほか)
アレゴリーと悲哀劇(古典主義におけるシンボルとアレゴリー;ロマン主義におけるシンボルとアレゴリー;近代アレゴリーの根源 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
有沢翔治@文芸同人誌配布中
6
ドイツ悲哀劇と古代ギリシャ悲劇の違いがテーマ。解説によると、当時のドイツ・バロック演劇は古代ギリシャ悲劇の様式をそのまま踏襲していたそうです。ドイツ悲哀劇の根源(源泉)をアレゴリーの観点から古代ギリシャ演劇と区別しています。2015/08/29
袖崎いたる
5
ベンヤミン、いままで何故かまともに真に受けてこなかったけど、エッグい洞察力があるね、この人。ゲーテを慕いながら、ゲーテに抗して、シンボルよりもアレゴリーを重視・称揚するのだもの。そのスタイルたるや…。とくに言葉とは何かってことに敏感でいて、常人にはひたすらハテナマークだろう。わたしも、わからん。わからんので、見入る。芸術界隈の人がベンヤミンの引用をしているのを見たことがあるけど、そこで前人間的・超人間的な言語観が取り上げられていたのよね。付き合い甲斐がありすぎるっしょ(笑)2020/08/10
大根
0
悲哀を催すのではなく、悲哀に満足を覚えるものこそ、というくだりで目から鱗。2012/03/11