内容説明
1860年南ロシアに生れたチェーホフは短篇小説作家として頂点を極め、晩年には「桜の園」「かもめ」など劇作に力を注いで演劇の新時代を画した。本書には、功成り名とげた老教授の寒々とした日常を綴った名作「たいくつな話」、夫がありながら奔放な恋にふける人妻を描いた「浮気な女」の他、「アリアドナ」「殻にはいった男」「たわむれ」「コーラス・ガール」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぞしま
14
「たいくつな話」はワーニャおじさんの教授にも通じる、チェーホフ自身の顕れのように読んでいた。漱石の日記にも通じるような陰鬱さが満ちていてなかなか沈痛な話。 「浮気な女」は別訳で読んだ方が好みだったかな。女と画家が船の甲板で口説き口説かれてるシーンは妙にリアルで、我がことのようにつらい、どこまでも情熱的で、美しい。2021/11/24
koishikawa85
5
表題のたいくつな話が最も面白い。若い時にも読んだことがあるようだがまったく記憶にない。しかし今読むと老教授の寒々しい生活が身にしみて迫ってくるような気がする。自分が年をとったからだろう。2024/06/02
ならむしん
1
面白かった。「たいくつな話」は『かもめ』の原型みたいで良かった。女優を目指していた少女がいいキャラしている。好き。「浮気な女」と「アリアドナ」はファム・ファタールというより、なんか寝盗られた気分になった。「殻にはいった男」はそうだ! そうだ! もっと言ってやれ! って思いながら読めた。「たわむれ」はエモい。「コーラスガール」は滑稽でケラケラ笑いながら読めて楽しかった。2024/07/13
だん
0
初チェーホフ作品。解説で知ったけど、ドストエフスキーよりも後の人なのか。2010/07/29
まつも
0
『たいくつな話』は、功なり名を遂げた老教授の晩年に至って自分の内面がまったく空虚であることを自覚し、愕然とする話。この話でまさしく「中心の喪失」が描かれている教授の独白がある。 『およそいっさいのものに関して私がつくりあげる思想や感情や概念には、それらのすべてをひとつの全体にまとめあげているような一般的な或るものが欠けている。あらゆる思想、あらゆる感情が私の中で互いに何の関係もなく、別々に生きているのだ。』なんだかこの教授の虚無感に同調する部分が自分にもあるような気がしてならない。2010/01/22
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