内容説明
「お国は?と女が言った/さて僕の国はどこなんだか、」沖縄の清高な魂と風土をたっぷりと身につけて生まれ育ち、二十歳の頃失恋の痛みを抱え、上京。自虐的なまでの深い自己凝視を独特のユーモアに解き放った詩人山之口貘(1903~1963)。その心優しい詩「妹へおくる手紙」「会話」「夢を見る神」「沖縄よどこへ行く」等の78篇と、自伝的小説2篇、詩論随筆12篇を以てこの希有の現代詩人の宇宙を集成。
目次
襤褸は寝てゐる
加藤清正
鼻のある結論
士族
猫
転居
思弁
来意
再会
座蒲団〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
51
【世間はひとつの地球で間に合っても/ひとつばかりの地球では/僕の世界が広すぎる】わたしの大好きな、明治36年沖縄は那覇生まれの詩人の詩文集。詩78篇と自伝的小説2篇、詩論・随筆12篇。巻末に、息子の「著者に代わって読者へ~父は、やや変種の詩人のようである」。解説は、詩人・荒川洋治。年譜に著書目録。詩人は「雲の上」で、<たった一つの地球なのに/いろんな文明がひしめき合い/寄ってたかって血染めにしては/つまらぬ灰などをふりまいているのだが/自然の意志に逆ってまでも/自滅を企てるのが文明なのか>と問いかける。⇒2024/02/12
YO)))
18
高田渡が唄を付けた『結婚』がとても好きで,いずれ誰かの披露宴の余興ででも唄ってやりたいものだと思いながら果たせずにいる. エッセイ「つまり詩は亡びる」に於ける,詩の概念は人類の概念と等しくなければならない―個人の中で死ぬことはあれど,詩全体の滅亡は人類の滅亡と同時せねばならない―との主張は,そのまま,生きて詩を書くことに対する詩人の覚悟と見受けた.(続く)2016/03/06
fseigojp
7
この中の生活の柄が実にいい 高田渡が歌にしている 歩き疲れて、夜空と陸との隙間にもぐりこんで。。。。しみるなあ2015/07/23
きつね
5
「若しも女を摑んだら」 若しも女を摑んだら/丸ビルの屋上や煙突のてつぺんのやうな高い位置によぢのぼつて/大声を張りあげたいのである/つかんだ//つかんだ//つかんだあ と張りあげたいのである/摑んだ女がくたばるまで打ち振つて/街の横づらめがけて投げつけたいのである/僕にも女が摑めるのであるといふ/たつたそれだけの/人並のことではあるのだが。 ___ ほかに、小説「野宿」、エッセイ「おきなわやまとぐち」が好き。2013/02/14
tomomi_a
4
わたしたちのかわいいおじさん。自殺しないひとの、しなやかな絶望と発する小さな光。最後、可愛がってもらえたらよい、という娘さんの言葉に、存分に!と思って応えた。2014/09/08




