- ホーム
- > 和書
- > 文庫
- > 歴史
- > 講談社 吉川英治文庫
内容説明
一ノ谷の合戦から屋島の合戦までには、1年の月日が流れている。さきの合戦に大功をたてながら、なんら叙勲の沙汰もうけぬ義経。そしていったん任官後は、鎌倉に断わりもなく、と不興を買い、平家追討使の大役も範頼に奪われた義経。鎌倉どの差向けの花嫁も、彼の心を暗くする。だが、源氏は義経をまだ必要としていた。―西国攻めの範頼軍は備前児島に立往生し、平家軍が猛威をふるう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kiyoshi Utsugi
41
屋島の戦いが始まるところまでを描いています。那須与一の扇の的のシーンはまだ登場しない。 12巻のクライマックスシーンは、源義経と静御前が晴れて結ばれるところと、熊野別当の湛増が源氏につくべきか平氏につくべきかを紅白の鶏を使った闘鶏で決めようとするところ。ただ、新・平家物語では吉川英治の独自解釈で闘鶏の結果は平氏の赤が勝って、平氏方には平氏につくと欺いたとしています。 源平合戦のシーンはやはり面白い。 義経は四国の勝浦に上陸して、そこから陸路を北に進んで屋島に向かったんですね。2022/07/10
ちゃいろ子
39
義経というと何となくイメージとして直感で動く天才と思っていたが、私の物知らずで大きな間違いだった。リサーチを重ね準備を怠らず戦略を練りに練って初めて動く人なんだなと知った。また、人に対してもとても細やかな気遣いができ思いやりがあり。そりゃ草の実党のみんなが慕うわけだ。鵜殿党との約束を、お互い忘れずにいるところも良いなぁ。 那須与一との再会も胸が熱くなった。 大嵐の中、海を渡り屋島へ。 義経たちの場面では源氏がんばれと思い、平家の場面では平家頑張れと思ってしまう(^_^;) 2021/12/07
金吾
35
頼朝が義経を警戒するのはわかりますが、あまりにもツールが、一方的なので客観的にならないかなと思いました。重衡の話は運命を感じます。2023/04/14
Toska
30
熊野水軍の去就をめぐる源平の駆け引きは、物語の中では「溜め」にあたる部分なのだろうが意外に面白かった。本作の義経は、鎌倉の兄に気を遣い部下の突き上げを抑えるなど、どこか中間管理職的な気苦労を背負っている。だが暴風を衝いての渡海という狂気の決断は、牛若時代の傍若無人さが蘇ったかのように見えた。徹底して「いい人」にするのか天真爛漫な驕児イメージを表に出すのか、義経の人物造形は意外と難しいのかもしれない。そして舞台はいよいよ屋島へ。2025/01/10
シュラフ
28
一ノ谷の戦いから屋島の戦いへと至るまでが描かれている。一ノ谷にて捕らわれた平重衡の過酷な運命、熊野水軍の取り込みをめぐっての源平双方の駆け引き、そして暴風雨の中の義経の四国への渡海、などなど物語はドラマティックに展開していく。その背後から義経に屋島を急襲された平家軍はあわてふためいて海へと逃げる。もっともこの時の平家軍は、知盛が彦島の守りに、また一部は伊予の抑えへ、と兵力が分散されており、屋島の守りは手薄であったという。となれば先の一ノ谷の戦いの敗北の時点ですでに平家軍は再起不能であったということだろう。2017/05/03