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内容説明
源氏の内輪もめが幸いして、都落ちした平家は急速に勢力を挽回していた。西海は一門の軍事力の温床、瀬戸内には平家の兵船が波を蹴たてて往きかい、着々と反攻の秋を窺っていた。わけて一ノ谷は天険の要害、平家自慢の陣地だった。加えて兵力では、平家は源氏の何倍も優位にある。しかし、地勢と時と心理とは、まったく平家に不利だった。義経軍の坂上からの不意打ちに算を乱して敗走する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kiyoshi Utsugi
41
この巻では、一旦都落ちして屋島にこもった平家が、再度上陸して一ノ谷の戦いを迎え、範頼、義経の軍に破れて、再び屋島に落ち延びるまでを描いています。 びっくりしたのは、先日訪れた日野市にある平山季重館跡の主であった平山季重が源義経の一行の一人として、一ノ谷の戦いに従軍し、この本の中でも何回となく名前が登場したこと。 そんな有名な武将だったのですね。 平家の世から木曽義仲の世に変わり、さらに源頼朝の世に変わっていく様が、なんともせつなく感じられます。 また、これを読んでいたら須磨浦公園に行きたくなりました。2022/06/20
ちゃいろ子
39
来年の大河に向けてサクサクと。 こちらを読んでいると、また永井路子さんの炎環を再読したくなる。相乗効果。 前巻の感想で、頼朝は陰険なイメージと書いた気がするが、義経との不和は周りのせいでもあったのだなぁと。梶原景時嫌い←単純です。 義経は弁慶たちが不満に思うくらい兄に気を使っているのに。 そして一の谷。熊谷直実と敦盛、忠度など、敵味方であっても何とも人間らしいというか、、それぞれ心に残る。 生捕りとなった重衡。元々末っ子気質で愛される人だったようだが、読んでいて私にもそれが伝わってきた。 2021/11/27
金吾
37
一の谷の戦いは意外と義経の部分が少なかったですが、混乱していくなかを戦う平家の描写が良かったです。また敦盛と重衡がかなり濃く書かれていたのが印象に残りました。2023/04/13
シュラフ
35
一ノ谷の戦いと言えば、義経の逆落としがあまりにも有名である。だが吉川英司は、この逆落としをドラマティックには描いてはいない。奇襲攻撃によって源氏が平氏を破ったと理解していたのだが、実はこの戦いは後白河法皇の詭計があったということをはじめて知った。戦いの前に後白河法皇が平氏に講和をすすめており、これによって休戦状態にあった平氏を源氏が一方的に襲ったという。あまりにも平氏に対してむごすぎる仕打ちである。この戦いで、忠度や敦盛らといった一門の有力諸将を失った平氏の打撃はあまりにも大きく、屋島へと逃れる。2017/05/03
Toska
30
一ノ谷の戦いとその戦後処理。合戦前夜を平家目線から書き起こしたのが目新しい。幼い安徳帝が流浪生活に疲弊し、ストレスを溜めていく場面に容赦のないリアリティがある。そして炸裂する後白河の卑怯パワー。義経も当然活躍するがその描写は抑制的で、物語の派手さよりも実証に寄せた感じ。古典『平家』を超えようとした吉川英治の努力が見て取れる。後半は平重衡が主役格で、彼の鎌倉護送に伴い、出番の少なかった頼朝にもスポット。濃厚な一巻だった。2025/01/08