内容説明
自分のことにしか興味が持てない著者が、現実との感覚のずれに逆上して『怒りの薔薇くい姫』と化し、渾然一体となった虚構と現実が奇妙な味わいを醸し出す「薔薇くい姫」、男同士の禁断の愛を純粋な官能美の世界にまで昇華させた「枯葉の寝床」「日曜日には僕は行かない」の三篇を収録。
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
33
☆☆☆ 正直言ってその過剰な表現に辟易するところもあったが、独特の個性的な文体、衝撃的なストーリーは、まあまあ面白かった。ひとりよがりな「薔薇くい姫」は著者自身がモデル。むしろ男色を扱った「枯葉の寝床」「日曜日には僕は行かない」の方が俄然面白い。それにしても両作とも簡単に人が死ぬのはどうか。小説として登場人物の死がもたらす劇的な効果を狙ったものであろうが、そのあざとさがいただけない。評価は大いに分かれるところであろう。「日曜日~」の婚約者八束与志子がおもちゃにされあまりにも可哀想。2016/11/27
タカギ
24
純文学BL(身も蓋もない…)を読みたかったのだけど、エッセイと小説のあいだのような「薔薇くい姫」が一番面白かった。自分ではまともなつもりなのに、まともな大人としては相手にされない著者が、現実との感覚のずれに逆上する様子が滑稽でおかしい。「枯葉の寝床」「日曜日には僕は行かない」が男同士の愛の話だけど、私、なよなよした美少年がいまいち…。しかもすぐに何かねだる小狡い少年たちで。文章は美しいけど、物語としては好きではなかったです。2021/05/31
藤月はな(灯れ松明の火)
14
「薔薇くい姫」では父親である森鴎外氏に溺愛され、御洒落な語りと毒舌で知られる森茉莉嬢の怒りがそこかしこで炸裂します。子供っぽくて見ている分には飽きなさそうですが実際、付き合ってみるといらっとするかも。女子には絶対、好かれそうにない。でも執筆状況などの経過が分かるのは嬉しいです。残りの2作品は現代のBLではなかなか、描かれることのない恋愛における罪深さや業を儚くも耽美に昇華しているのが印象的でした。情事も仄めかしているのに赤面せざるを得ませんでした・-・;2011/04/28
Roy
10
★★★★☆ 言葉の装飾や色彩が美しく濃厚。しかし、当時はセンセーショナルな物語だったのか知れないが、現代を生きる者としてはさほど。関係ないが、森茉莉の写真にひいた。何もこの写真でなくとも…2008/10/03
桐ヶ谷忍
9
随筆的小説とでもいえば良いのか。なんというか私も主人公みたいな扱い受けることがあって、読んでいて親近感どころか居心地が悪かった。キャラクタの名前の付け方が、今なら中二臭いとしかいえないのだけど、発表した当時はこれが最先端のセンスだったのだろうか。「枯葉の寝床」も、こういう作品があって今日のBLがあるのかと感慨深かったが、なにぶんセンスが昔なので私には合わなかった。2018/02/19