内容説明
そこはかとなきおかしみに幽愁を秘めた「なだれ」「つくだ煮の小魚」「歳末閑居」「寒夜母を思ふ」等の初期詩篇。“ハナニアラシノタトヘモアルゾ「サヨナラ」ダケガ人生ダ”の名訳で知られる「勧酒」、「復愁」「静夜思」「田家春望」等闊達自在、有情に充たち漢詩訳。深遠な詩魂溢れる「黒い蝶」「蟻地獄(コンコンの唄)」等、魅了してやまぬ井伏鱒二の詩精神。四部構成の初の文庫版『厄除け詩集』。
目次
厄除け詩集
訳詩
雨滴調
拾遺抄
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
クプクプ
84
井伏鱒二の本は初めて読みました。山梨県の下部町源泉館を訪れた「按摩をとる」という詩と、お母さんのことを書いた「寒夜母を思ふ」という詩が印象に残りました。井伏鱒二といえば日本文学界において歴史上、重要な人物で、もっと若いときに読んでおけばよかったですが、今からでも作品を少しずつ読んでいきたくなりました。2022/12/20
たくろうそっくりおじさん・寺
81
いつ見ても上手いタイトルだなぁと感嘆する。カッコつけてないし、厄除けなら一家に一冊あってもおかしくないし(また邪魔にならない薄さだ)、読んでおけばおまじないぐらいには効果がありそうである。近頃木山捷平や小山清の本を読んでいると、文学は井伏鱒二を中心に回っているような気になってくる。太宰治と言えど小惑星のひとつに過ぎない。長生きして弟子筋の死を見送ってきた気持ちはどうだったのだろう?厄を除けたぶん哀しい思いをたくさんしたのではなかろうか?そんな気もする。読んで面白い詩集である。この話コメント欄に続く→→→。2019/08/17
HANA
59
余りにも名高い「勧酒」目的で読んだが、訳詩はどれも名品ばかり。特に前半部の「コノサカヅキヲ受ケテクレ ドウゾナミナミツガシテオクレ」があってこそのあの有名な二句が生きるんだなあ。他にも漢詩なのに「アサガヤアタリ」という固有名詞が出てきたり、各詩を完全に自家薬籠中のものとしている。翻訳って自由自在にするとこんなにも面白くなるんだ。創作された詩の方は極めて平易。その中にも独特の惚けたような空気感が醸し出されていて、どこか著者の小説にも通じるような感じがする。とあれ名訳とされた詩の数々、読めて良かったです。2024/12/18
Y2K☮
34
著者自身の詩は朴訥というか衒いがない。でもさらっと書いた風で、実はかなりきめ細かく推敲している気がする。訳詩になると一転して自由奔放。ほとんど翻案に近い。原文が中国の詩であるにもかかわらず「アサガヤアタリデ大ザケノンダ」とか。それは昨晩のあなたでしょと。ある意味で町田康の「パンク侍」や口語訳シリーズの先駆者といえそう。まだ「山椒魚」及び短編いくつかと「黒い雨」そしてこの詩集しか読んでいないが、どれも受ける印象が異なっていて井伏鱒二を掴み切れぬ。明らかに純文学の人でありながら直木賞を受賞している点も含めて。2025/12/04
双海(ふたみ)
30
今日、新宿の古本市で買って、帰りの電車で読みました。巻末の年譜に14歳のころ、「学校の内庭の池に飼われていた山椒魚に、雨蛙を見つけては食べさせていた」という記述があります。寄宿舎は軍隊式に近く、小説を読むことも禁じられていたそうで、この餌やりが慰めだったのかなと想像してしまいます(笑)2015/09/15




