内容説明
夏目漱石が『三四郎』の“偉大なる暗闇”広田先生のモデルとしたとの“伝説”の旧制一高独逸語教授・岩元禎。頑固一徹、情容赦なく落第点をつける徹底した厳格さの古典的理想主義の哲学者。その変り者の生涯と精神の軌跡。近代ヨーロッパ文化と初めて遭遇し苦闘するその姿を漱石など関連の人物たちと対比させた多面的評伝にして明治の精神史、思想探求の書。第13回平林たい子賞受賞。
目次
序章 清談会
1 偉大なる暗闇
2 ドイツ語の教室
3 落第
4 薩摩武士
5 「哲学概論」
6 「ギリシア人」ケーベル
7 独身者たち―粟野健次郎・狩野亨吉
8 志賀直哉の家庭教師
9 聖者の涙―三谷隆正
10 ホモ・アミクスの世界―友情空間のたたずまい
終章 理想主義の終焉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うちこ
2
「三四郎」の広田先生のモデル説がある人物(岩元禎)を追ってみた、という本。一高(現在の東京大学教養学部)の教師時代、漱石は英語、岩元禎はドイツ語を教えていたのだそう。有名な人の名前がたくさん出てくるけど、岩元禎は西田幾太郎と同級生で、弟子に九鬼周造がおり、高校時代の志賀直哉の家庭教師をしていたりする。 わたしの想像では「鼻から哲学の煙」「生涯独身」などのキャラクターのアウトラインは岩元禎のエッセンスを多分に盛り込みつつ、中身は漱石で、モーレツに面白いセリフは粟野健次郎の要素が強いのではないか、と感じた。2014/03/03