内容説明
“あなたはどこにおいでなのでしょうか”戦後間もなく発表された「反橋」「しぐれ」「住吉」三部作と、二十余年を隔て、奇しくも同じ問いかけで始まる生前発表最後の作品「隅田川」。「女の手」「再会」「地獄」「たまゆら」他。歌謡・物語、過去、夢、現、自在に往来し、生死の不可思議への恐れと限りない憧憬、存在への哀しみを問い続ける、川端文学を解き明かす重要な鍵“連作”等、十三の短篇集。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんすけ
25
「若い子と心中したいです。」 川端らしい色っぽい言葉だ。 上記は川端の最後の作品といわれる「墨田川」の一節。 「墨田川」は他の「反橋」「しぐれ」「住吉」と連作を思わせる形式になっている。 それぞれの作品は、「あなたはどこにおいでなのでしょうか」でつながる。だが「隅田川」は「それも今はむかしとなりました」で終わる。川端はすでに死ぬことを考えていたのか。 共通するのは継母に慈しみ育てらた思い出のようだ。 能の「住吉」は、継子いじめの物語だった。だが継母が語り聞かせる「住吉」は、聴くものに愛おしさを蘇らせる。 2022/07/28
たぬ
19
☆3.5 13編収録。なんだこの仏に救済を求めてる感は。さては死の直前の作品か?(→昭和46年発表の「隅田川」以外全部昭和20年代の作だった) 後半の若い娘さんがかなり年上の男性と結婚する話、温泉地で妹が死ぬ話、勾玉を形見分けして云々する話、心中未遂をした若い男女を拾う話はわりかし好き。しっとり落ち着いた風情でよい。でも川端康成は短編より長編が好みだわ。2024/05/07
モリータ
17
三部作は、解説を読むと川端康成の人生と関わっておもしろいと思うのだけど、それだけ読んでも住吉物語にピンとこなかったりして良さがわからなかった。その点、「たまゆら」はすごく美しいと思った。「こいつ(瀬田)は死んだ女(治子)と肉体関係を持ったのか?」という嫉妬まじりの感情を、たまゆらを聞かせたのだろうか、と表現するのとかね。あと、曲玉を目に当てて景色を眺めて見るのは、「山の音」の、死んだ友人から手に入れた能面を顔に近づけて恍惚する場面を思い出した。2014/06/21
荒野の狼
13
2021年の新年に大阪府の住吉大社を訪れたが、川端康成の住吉三部作なる短編三作「反橋(そりはし)」、「しぐれ」「住吉」があるのを知り本書を手に取った。三部作は昭和23年(1948年)から翌年にかけて3ヶ月の間隔をおいて発表された。これに登場する人物が再登場する「隅田川」は、この22年後に発表され、川端の遺作。2021/02/03
インフルエンザ未遂(田仲風太)
13
偶々心斎橋や難波の通りのわりかし大きめな服飾兼 書店バーカフェな洒落たスタンダードブックストアに置いていたのを発見して、心情は探していた純喫茶が似合う文豪作家川端康成の余り知れ渡れない 微妙なる共感に胃腸が痛み軋む感じです。 中身は、純作家の中でも好む方に属する川端康成の 淫靡にひっそり酒瓶を添える程度に伏せる具合の粗品具合。 雄大な幻聴を信じ込んで雨風塞ぎ精悍な顔立ちを。探している間に頭に過ぎ行く三途の川2018/10/13