内容説明
元赤坂の芸者だった老女が、昔の男の突然の再訪に心揺れ、幻滅する心理を描く「晩菊」。女流文学者賞受賞。戦死した夫の空っぽの骨壷に、夜の女が金を入れる「骨」。荒涼とした、底冷えのするような人生の光景と哀しみ。行商の子に生まれ、時代の激動を生きた作家林芙美子が名作『浮雲』連載に至る円熟の筆致をみせた晩年期の「水仙」「松葉牡丹」「白鷺」「牛肉」等、代表作6篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AICHAN
35
図書館本。図書館がやっと開館した。またすぐ閉まりそうで、予約していたこれを急いで受け取りにいった。林芙美子の晩年の短編6編。旧仮名遣いであり段落があまりない様を見て、読みにくそうな作品だなと第一印象。しかし、読んでみるとすらすらと読め、つっかえることもない。まさに円熟の筆致といったところ。2021/07/17
fseigojp
13
映画原作 杉村春子が主演したのは、これくらいではなかろうか 上原謙のダンディ気取りで金を無心するダメ男の演技は最高だった2015/08/23
うちこ
8
著者は昭和24年に長編『浮雲』を発表した二ヶ月後に47歳で亡くなっていて、この本にはその直前に書かれた短編が収められています。 どれも展開が容赦なく、読み終わるたびに「おもろーーー!」とやんちゃ盛りの少年のような勢いで感想の言葉が脳内にあふれ出ました。 どんなむずかしい食材でも、干からびたり腐りかけている食材でも美味しく料理してしまう。これは包容力なのか創作意欲なのか。たぶん後者なのだろうな。 ありふれたしんどい人生を文字にするプロの技に舌鼓、みたいな読書時間でした。2023/03/12
モジモジアニキ🏳️🌈🏳️⚧️🍉
7
宮部みゆきが林芙美子の作品はハードボイルドだと言っていたけれど本当にそうだと思う。けれど厳しい目線ながらも筆を妥協しない力強さとそこに優しさも感じる。以下各話の感想。 晩菊☆主人公『きん』の武装シーンでもある、昔の若い恋人と対峙するための準備描写が大好き。読んでいて血が滾る。 水仙☆毒親な母とどうしようもないその息子。救いようの無い…と思いきや2人の事がついつい気になって追ってしまう作品 白鷺☆主人公に生い立ちを語らせておいて最後で聞き役の姪に「どうでも良い」と思わせるのは凄いリアリズムだけれどとても過酷2022/11/13
hirorin
7
以前、関係のあった20歳年下の男が訪ねてくるのに備えて56歳の女が少しでも若くあの頃と同じように美しく見られたいと思って身支度を整える。男はお金を借りたいだけだけど、一応女を誘う。心の中では、女はお金をたくさん持っているし、殺してしまってもいいかも?と。でも女の方が一枚も二枚も上手。一流の芸妓だったのだ。56歳の女は、今の言葉で言えば「私は今もイケてる?」「まだ男に誘われる?」が気になるのだけど、しっかりとしていて。どう言ったらいいか分からないけれど、男の正体を見破って「あ~あ」と思うお話。2022/08/15
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