内容説明
世を避けて隠れ忍ぶ村里―かくれ里。吉野・葛城・伊賀・越前・滋賀・美濃などの山河風物を訪ね、美と神秘の漲溢した深い木立に分け入り、自然が語りかける言葉を聞き、日本の古い歴史、伝承、習俗を伝える。閑寂な山里、村人たちに守られ続ける美術品との邂逅。能・絵画・陶器等に造詣深い著者が名文で迫る紀行エッセイ。
目次
油日の古面
油日から櫟野へ
宇陀の大蔵寺
薬草のふる里
石の寺
桜の寺
吉野の川上
石をたずねて
金勝山をめぐって
山国の火祭
滝の畑
木地師の村
丹生都比売神社
長滝白山神社
湖北菅浦
西岩倉の金蔵寺
山村の円照寺
花をたずねて
久々利の里
田原の古道
越前平泉寺
葛川明王院
葛城のあたり
葛城から吉野へ
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
60
大和・近江・京都を中心とした24編の紀行文だが、ただの旅エッセイではない。若くして能舞台に立ち染物工芸を営み骨董の目利きと知られる白洲正子ならば、芸能・古美術への確かな眼が如何なく発揮されているのは想像の範囲内。だが、吉野と葛城の旅が載っているというからという理由で、読んでみた、能や古美術に無知な私をして、思わず全編を熟読せしめたのは、想定外のアクティブな眼があったからだ。それは、表通りではなく、世を避けて忍ぶ「かくれ里」を偏愛し、そうなると山に登って日が暮れて月夜の中をへとへとになって降りてくるのを↓2017/03/14
Kajitt22
41
琵琶湖を中心に、近江、鈴鹿山麓、吉野、京都、湖北から越前と、かくれ里や寺院を訪れる紀行文。地名の由来や土地に伝わる伝承を、神話から万葉集、芭蕉まで登場させる解説が、端正で歯切れ良い美しい日本語で書かれている。そうした山合の村々に、戦いに敗れた人々が隠れすんだ当時に静かに思いをはせる。いろいろな寄り道も楽しい。再読。2018/03/25
i-miya
41
2013.03.31(読んだわけではありません)日経新聞夕刊(2013.03.30夕刊文化面)。『文学周遊355』手さぐりに摘んだ道草の記録である-滋賀・南近江。 (白洲正子=1910-1998) 樺山愛輔の次女、東京生まれ、父方、母方祖父、ともに海軍大将で伯爵。 4歳で能、14歳で舞台。 1929白洲次郎と結婚。 戦後能面求め旅、この紀行文のきっかけ。 24編。 近畿、近江多い。 石が多い。 近江の枕詞、「石走(いわばし)る」。 日本一の石造美術。 2013/03/31
メタボン
37
☆☆☆★ 古典、仏教、能等の圧倒的な知識を持って、近江・越前・大和を巡る白洲正子の紀行は、非常に味わい深い。されど本当の意味で、白洲正子が辿った古寺、隠れ里と「出会う」には、やはり自分の感性をフルオープンにして、これらの地域を訪なうにしくはないと思った。その日まで私ももっと教養を高めたい。2019/08/28
井上裕紀男
36
無論数々の紀行が収められていますが、何故か「山国の火祭り」「葛城から吉野へ」に魅せられました。 常照皇寺を訪ねて花背から鞍馬越えされて火祭りを拝見するという、紀行の流れが何とも良い。狐に化かされたのかと回顧するほどの火祭りは、太古から形をそのままにして人を少し狂わせるような感覚をあぶりだすのでしょうか。 葛城で役行者について語られる時、訪れた景色の中に自然信仰と宗教をつなげる「得体の知れないもの」を見出された下りが何とも言えない。2021/05/02
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