出版社内容情報
【内容紹介】
世界初の脳移植手術を受けた平凡な男を待ちうけていた過酷な運目の悪戯!
脳移植を受けた男の自己崩壊の悲劇。
平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。そして彼の頭に世界初の脳移植手術が行われた。それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしょうもない。自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植された悩の持主(ドナー)の正体を突き止める。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
736
東野圭吾の比較的初期の長編。発想の元になった(少なくても大きなヒントを与えた)のは『アルジャーノン』だろう。物語全体の前提となっているのは脳移植なので、この意味でのリアリティは最初から捨てている。したがって、人物設定と叙述力とで作品を構成してゆくわけだが、これが実に見事。発想そのものは単純なのだが、展開もスリリングだし、人物配置も上手い。ことに、末尾での恵の存在が作品に一縷の救いを与えている。また、「死」の定義にも踏み込んでおり、主題にさらなる深みを与えている。なお、ドナーのトリック(伏線?)は空振り。2020/11/01
Tetchy
683
切ない。なんとも切ない物語だ。脳を移植された男が次第に移植された脳に支配され、性格を変貌させていく。プロットを説明するとたったこの一行で済んでしまうシンプルさだ。この魅力的なワンアイデアの勝利もあるだろうが、やはり名手東野のストーリーテラーの巧さあっての面白さであろう。脳移植がアンタッチャブルな領域である事をひしひしと感じさせ、その恐ろしさをじわりじわりと感じさせる。しかし作者は別に警鐘を鳴らしているのではない。脳、そしてそれによって形成される自分という物の正体を脳移植という題材で探求しているようだ。2010/05/11
Kircheis
514
★★★★☆ 世界初の脳移植手術が成功するものの、本来の心優しい性格が破壊的な性格に変貌していく様を描いた作品。 東野作品だけど推理物ではない。 ジャンル的にはサイコホラーなのかな。 狂気に支配されていく『成瀬純一』が実に臨場感たっぷりに描写されていて読んでいてドキドキしっぱなしだった。 冷静に考えるとプロットもオチも良くあるパターンなんだけど、同種の作品群の中でも頭一つ抜けているなぁと感じた。2019/02/07
zero1
498
【今の僕は、一体誰なのだ?】事件に巻き込まれ、初の脳移植手術を受けた純一。以前の彼から少しずつ変化が。ドナーは誰?狂暴になっていく主人公を見るのは心が痛い。読んでいて他の作品をいくつか連想した(後述)。自分の学習能力にため息が出ても、【変化しないありがたさ】を再確認できる作品。また恵の存在が救い。後半、【人の死とは何か?】という問いが出てくるが、これは後の「人魚の眠る家」につながる。神経学者のラマチャンドランなら興味深く読む(後述)?古くて粗い部分もあるが流石は東野。再読でも【読ませる勢い】を明確に示す。2020/02/20
ehirano1
467
展開はある程度読める内容なのですが、それでも著者の筆力に圧倒され、ページを捲る手が止まりませんでした。好い読書でした。2018/01/03