内容説明
ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきたのだ。ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の音は響いてきた。―その音にさそわれて僕はギリシャ・イタリアへ長い旅に出る。1986年秋から1989年秋まで3年間をつづる新しいかたちの旅行記。
目次
ローマ
アテネ
スペッツェス島
ミコノス
シシリーからローマに
春のギリシャへ
1987年、夏から秋
ローマの冬
1988年、空白の年
1989年、回復の年
イタリアの幾つかの顔
オーストリア紀行
最後に―旅の終わり
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
200
310年前、芭蕉は「片雲の風にさそはれて」江戸を出立し、そして26年前、村上春樹は「遠い太鼓」の響きに誘われて、ヨーロッパに旅立った。それから実に3年間に及ぶ彼の地における滞在記である。本書は紀行とはかなり趣を異にするが、イタリア、ギリシャでの滞在者ならではの体験が主観的に(これはいい意味で)語られる。この間は村上自身にとっても重要な時期で、『ノルウエイの森』の執筆、刊行と大成功、『ダンス・ダンス・ダンス』の執筆、刊行がなされている。そして、村上の小説への向かい方、また彼にとっての翻訳の意味がよくわかる。2012/07/27
ハイク
164
村上春樹夫婦の3年間に亘るヨーロッパ旅行記である。旅行記と言ってもその間「ノルウェイの森」や「ダンス・ダンス・ダンス」の長編を書いている。日本を離れた方が集中が出来、小説を書き易いのかも知れない。イタリアを起点にしてギリシャやオーストリアを旅している。特にギリシャの島々に行くのが好きなようだ。彼の文章は読んでいて楽しくなる。私はGoogle・mapを見ながら知らない土地の地図を見ながらその雰囲気を少しでも感じ取るようにしている。ギリシャだけ行ったことがないので、知らない島々の位置を知ることが出来る。 2016/03/25
抹茶モナカ
141
作家の村上春樹さんのヨーロッパ旅行記。37歳からの3年間、『ノルウェイの森』と『ダンス・ダンス・ダンス』を書いていた時期の旅行スケッチで、文体も両作に似ている。その当時の文体で、懐かしくなった。僕は村上春樹さんのファンのつもりでいながら、読んでいなかった本。そういう取りこぼしが多いので、読んでみた。執筆当時の村上春樹さんと、今の僕の年齢が近いせいか、非常に面白く読めた。2015/04/19
らったった
125
かなりボリュームがありました(^^)色んな国に行って色んな人と出会っておいしい料理を食べて。旅の醍醐味を満喫してる風にもあるんですが、その国特有のトラブルもあったり。ダンス3とノルウェイは海外で書かれたようです。参考になることはたくさんありました。エッセイ集いいですね(*^^*)2014/06/29
中玉ケビン砂糖
115
、村上春樹のエッセイはあらかた読んできたが、おそらくこれが最後の長めの作品だろう、イタリア・ギリシャを中心として、ヨーロッパを周遊した回顧の記、この欧州滞在中に『ノルウェイの森』『ダンス・ダンス・ダンス』を一気に書き上げたというから、多分ハルキがいちばんキレキレで脂ののっていた時期の散文、87年前後のことではあるが、当時の(珍しく村上春樹がぶちギレるくらいには)ガバガバな外国のインフラ事情などが細かく描かれており、久々に読んだ、ということもあるが2015/08/30