内容説明
住友商事元常務・鈴木朗夫が辿った反逆人生を描く。管理に全身で刀向かい、陰湿な日本的企業社会を一刀両断ににして逝った男。抜群の企画力、折衝力、語学力を持ちながら、ひけらけすこともなく、〈命に逆らいて君を利する〉―。袴り高き生と壮絶な死。現代ビジネスマンに鋭く問いかけるノンフィクション。
目次
まえがき ムッシュウと呼ばれた男
帰らざる人
男の美学
ジャン・コクトー
母と叔母と
自称スペイン特使
ビジネス・レターの風格
タフ・ネゴシエーター
卓越した「現代世界論」
Don’t disturb
管理に刃向かう
住友個性派の系譜
いやしくも浮利にはしらず
「外国人は任せて下さい」
恋文
“愛児”ケニイヘ
現代“社畜”批判
若き日の日記
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nob
7
住友商事元常務、鈴木朗夫の生き様を描く。「タフ・ネゴシエーター」の章で示される「国際化」に対する深い洞察は興味深い。ただ、全編通して「逆命利君」のタイトルが彼のイメージと重ならなかった。主君のためにならない命令には従わない、というこの言葉のイメージは、主人を第一とする「忠臣」である。あくまで自分自身の美学を行動基準にした「反逆児」鈴木には、「忠臣」という言葉はそぐわない。上司の伊藤との関係も、主君というより盟友という方が近いだろう。2017/04/02
urs
5
住友商事のレジェンド社員鈴木さんの話。住友商事らしい品格のある英語、の話が良かった。2025/02/14
Ikuto Nagura
3
日本の雇用関係を「双方の自由な意志によって契約する近代社会ではなく、一方的な命令と、盲従もしくは隷従が支配する封建社会に近いのである」と断じ、日本的な働き方を拒んだ鈴木朗夫。どれも正論すぎて「社畜人ヤプー」の典型たる自分には耳が痛い。「日本の特殊性は、それがあまりに特殊であるがゆえに、極めて特殊な事情と制約がある」なんて思考停止した理屈で、国際的な摩擦や孤立を深める日本企業。これは決して一昔前の企業文化ではなく、現在でも主流の考え方のままだろう。でも結局、独りの逆命ではその正論も普遍化されなかったわけだ。2015/05/09
Naota_t
2
★3.3 住友商事の常務・業務本部長で、54歳で早逝した鈴木朗夫氏の話。小説というよりは、会長の伊藤氏や妻からのインタビュー、本人の日記などからなる伝記だ。自身をムッシュウと呼ばせるほどフランスや海外に知悉し、英語も堪能、考え方も外国人のそれで、日本人の働き方を大いに嫌っていた。住友商事のビジネスについてもいくつか触れられていたが、そこがもっと具体的、俯瞰的に知りたかった。海外に興味がある人に商社は天職なんだろう。また、社畜、老害といった言葉は現代俗語だと思っていたが、90年代から存在したのは少し驚き。2021/12/13
はかり
2
久し振りに再読したが、新鮮な気持ちで読めた。世界には無い我が国独自の総合商社が力を発揮できたのは鈴木氏のような異能の存在が不可欠だったのかも。それに比して、我がサラリーマン人生の凡々だったことか。2013/06/01
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